簡単な数学 知ってるかい? (3-2) ABC予想のお話
文系の人のみを対象にしてます
前回は、a X b = cと言う掛け算では。左辺の掛け合わせる数の遺伝子は、右辺の積の数に受け継がれるが、一方、a + b = cと言う足し算では、左辺の掛け合わせる数の遺伝子は破壊され、右辺の和の数には受け継がれないということを話しました。従って、掛け算の場合と異なり、足し算の場合では、左辺の数の遺伝子から右辺の和の遺伝子を予測することは出来ないと言うことでした。数学の世界に、数の遺伝子を破壊してしまう足し算が、子の遺伝子の破壊が起こらない掛け算と混ざり合って存在するために、フェルマーの最終予想のような難問が沢山存在するのだそうです。
ところが、ジョゼフ・オステルレ博士とディビッド博士は、足し算(a +b = c)の場合でも、条件によっては左辺のaとbの遺伝子から、ある程度は左辺の和の数の遺伝子が予想可能であると言うことを発見し、1985年に「ABC予想」と言う理論が発表されています。
すなわち。a +b = cの足し算では、c/rad(c) < rad(ab)と言う数式が成り立つと言ううのです。なお自然数 n を素因数分解してn = p1e1p2e2……..pkek と書けるとき、rad(n) = p1p2…….pk と表わされます。
では、この数式の内容を具体例で説明してみましょう。面白いことに、このABC予想により、足し算の子供の遺伝子には、(1) 素数で表わされる遺伝子は1個ずつしかないか、あるいは (2) 複数個の5の遺伝子と1個ずつの素数の遺伝子を持つと言うことが導かれるのです。
例えば、2n + 3n の足し算について色々なnについて計算して行きますと、n = 1では右辺の和は5(素数)になります。同様に、n = 2の時の和は13(素数)、n = 3の時の和は35(5 x 7)、n = 4の時の和は97(素数)、n=5の時の和は275(5 x 5 x 11)、n = 6の時の和は793(13 x 61)となります。これらの答えは、上記(1)(2)の予想とぴったり一致しています。
このABC予想が発表されてから6年後に、ノーム・エルキース博士が、ABC予想が正しいものと仮定すると、今まで数学者を苦しめ続けてきた、あるいは今も数学者を苦しめている数学の難問が簡単に証明されてしまうことを発見し、ABC予想と言うものは、数学の中で最も重要な仮説であることになったのでした。例えば、完全な証明までに3550年を要した超難問であるフェルマーの最終定理でさえ、ABC予想を適用すると数行の数式の展開で証明されてしまうのだそうです。
詳しいことは、またの機会に譲りますが、このABC予想は難問中の難問で、多くの数学者を苦しめているのですが、京都大学の望月教授が、今の数学の世界(宇宙)にもう一つ別の数学の世界(宇宙)を仮定して、それらの数学の世界を結び合わせて複雑な計算と思考を加えることをベースにした「宇宙際タイヒミューラー理論」と言う斬新な考え方を用いて、このABC予想を証明しました。ただ、この望月理論には、真っ向から反対する数学者が多く、2021年に論文が発表された後も論争が続いており決着がついていません。