米国・イラン戦争でフェイク動画と反ワク派のフェイクとの関連性
数日前に突然に始まった米国・イスラエルのイランへの攻撃と、その攻撃に対するイランの報復攻撃の大混乱に乗じて、XやチクトックなどのSNSでは、生成AIを使って誠しやかなフェイク動画が氾濫している。そのほとんどが、Xやチクトックでの広告料収入を目論んだものばかりだ。平時ならまだしも、第三次世界大戦の引き金にもなりかねない逼迫した状況下でのフェイクは許されない。
こうした状況を考えないで拡散されるフェイクが、数年前の新型コロナ流行時でも世界中で厄介な問題を引き起こした。その一例として、新型コロナのmRNAワクチンに端を発した「反ワク」メッセージの拡散が社会の足を引っ張った。SNSで一儲けしようと企んだ者たちの、フェイクを武器にした「反ワク」メッセージが、コロナ流行の抑止のための医療活動に歯止めをかけたのである。
反ワクを唱えた者達の中で、実際にコロナに罹患し、重症化して死亡した人は日本でも数千人規模に達していたのではなかろか。自業自得と言えばそれまでだが、無知なるがゆえに、反コロナ主義者たちのフェイクに引きずられて、感染予防を蔑ろにして、挙句の果てにはコロナに感染し、重症化して非常に苦しんだ人たちがかなり多かったに相違ない。下記の記事は、新型コロナ流行下でのコロナワクチンについてのネット上での論争見聞記である。
新型コロナの反ワク論争見聞記
一昨年の初め頃だったろうか、Xでの反ワク論争に少しだけ参加してみた。ワクチン許容派とワクチン反対派(反ワク派)のそれぞれの言い分に耳を傾けてみようと思ったからだ。そして微生物学の専門家の立場で、その論争の仲裁役をしてみようと考えたからである。
反ワク派の人は、コロナのmRNAワクチンは、「接種されたコロナウイルスの細胞内でコロナウイルスのスパイク蛋白を作るためのmRNAが複製して増えて、細胞に悪い影響を及ぼし、発癌とか奇形を引き起こすんじゃないか。」とか、「細胞内に接種した人工のmRNAが、抗スパイク蛋白を作りすぎて、ひどいアレルギー反応、特にアナフィラキシー反応を引き起こし、場合によっては被接種者に死をもたらすんじゃないか。」とか、「スパイク蛋白のmRNAを保護するためのリピッドのマイクロカプセルが、強いアレルギー反応を引き起こすんじゃないか。」などと言う主張を繰り返していた。
それに対して、ワクチン推進派の人は、「コロナのmRNAワクチンの副反応は軽微で、mRNAワクチン接種に直接起因したような死亡例は稀有であり(わが国では、多くても250人で、いずれも科学的にコロナワクチン接種に起因していると確認された事例ではない)、通常はmRNA 接種後の副反応は発熱や弱いアレルギー反応はみられるものの、人命にかかわるようなものではない。世界中でmRNAワクチン接種でコロナウイルス感染が防止されたり、ウイルス感染の重症化が抑えられることで救われた命は1億5千万人もいる。」と主張して、Xでの議論は平行線のままであった。
僕は専門家の立場から、色々な科学的な知見を証拠として、反ワク派の人達の突飛な主張を切り崩そうとしたのだが、彼らは頑として僕の説明を否定した。反ワク派の主張の根拠は、殆どは科学的(医学的)な知見に基づくものではなく、彼らは出典が不明な噂話(フェイク)や憶測の類を頑なに信じ切っている印象が強く残った。
しかしながら、わが国で2024年10月から導入されているレプリコンワクチンは、接種したmRNAが被接種者の体内(細胞内)で自己増殖をして抗体産生を強めるタイプのもので、若干気になるタイプのワクチンである。発がん性や催奇形性が否定できないのである。そんな理由で、反ワク派の人達の懸念も強められてしまっている。僕も、レプリコンワクチンには若干危うさを感じている。
とは言うものの、通常のRNAウイルスの感染では、細胞内に侵入したウイルスのRNAゲノムはどんどん複製してウイルスの数は1万倍以上に増えるが、HTLV-1などの特殊なウイルス以外では、それが発癌を誘導することは知られていないと言う科学的な事実は、反ワク派の人達にも理解してもらいたいものである。
反ワク派の中の一部の人は、レプリコンワクチンなどでは、細胞内で増えたスパイク蛋白をコードしているmRNAが皮膚や粘膜からしみ出して、そのmRNAが他の人に感染するのではないかと主張している。体内に居るウイルスが皮膚や粘膜から染み出て他の生体に伝播する現象(シェディング)は、20報ぐらいの論文で報告されているが、その著者たちは、概ね二流の研究者で、発表されている論文はインパクトファクターが2以下のジャーナル(レベルがかなり低いジャーナル)に掲載されたものばかりで、昔からそう言う報告はあるが、「だからどうしたの。当り前じゃないか。」と言う陳腐なコンテンツの論文なのである。反ワク派の中の誰かが、偶然そうした論文を探し当てたのだろうが、この大したことのない論文の内容が、反ワク派に加担するインフルエンサーによって拡散されたのだろう。
反ワク派の人達のXでの記事や意見は、医学的にはレベルの低いものばかりであり、そうした記事を書いている人の多くは、微生物学やウイルス学には疎い人ばかりであり、耳学問をそのまま無批判に信奉して、騒ぎまくっているように見えてならない。知識のない人がフェイクを頑なに信じ切ってしまうと、科学者の手には負えなくなると言う良い実例だと思う。
他方、SNS で活躍しているワクチン推進派の人の多くも、正統な科学としての微生物学やウイルス学については素人であり、知識が足りないので、反ワク派の主張を切り崩す力がなく、いつまでもワクチン推進派と反ワク派との論争は、科学もどきに過ぎないレベルで繰り返されている。
その証拠には、XでのmRNAワクチンについての議論の場に、名だたる専門家が顔を出すことは無い。僕は、微生物学関係の会員数1万名以上の有名な医学系の学会の役どころを長く務めた人間なので、その辺の多くの専門家との交流があるが、未だかって彼らがXでのmRNAワクチンについてのワクチン推進派と反ワク派の論争の場に顔を出したのを見たことが無い。多くの専門家にとっては、反ワク派の主張は余りにも非科学的に過ぎて、殆どの専門家は反ワク派の人達をまともな論争相手としては認めていないのだろう。
今回、僕は若干の好奇心でその論争に参加してみたのだが、どちらのグループのリーダー格の人は、かなり意固地な所があって、自分の主張ばかりを繰り返し、議論がかみ合っていないように見える。反ワク派への説得活動は、「馬の耳に念仏」と言うことだ。そんな訳で、僕は1週間もしないうちに、彼らの堂々巡りの論争の場からおさらばした。
最後に一言。大阪大学の忽那賢志教授が有能な専門家として、新型コロナやワクチンについてブログやユーチューブで素人にも分かりやすく正しい知見をブログで解説しているので、是非とも参考にしてほしい。