免疫力を高めよう その1
免疫を高めるためのいろいろな方法について、科学的な観点からその有効性について考えて行きます。このブログの筆者は、微生物学が専門で、病原細菌の生化学、分子生物学、感染症学、感染免疫学、化学療法学、分子創薬などの領域の研究を50年の長きに亘って進めて来ています。
その研究の中で、細胞性免疫の成立・発現に及ぼす種々の生体成分や化学物質の影響についての研究にも手を染めることとなり、今から15年ほど前に欧米で提唱され始めたHost-Directed Therapeutics (HDTs)と言う新しい概念を導入した免疫生物学・分子生物学的手法による研究も進めて来ました。
このコラムは、筆者が国立大学を退官後に約10年間勤め上げた私立大学での3年生の免疫学の講義で、学生の免疫学についての興味を持たせるために行なった補助説明の内容をベースにしていますので、一般の人達にも十分に理解できると思います。
どうしても、一部は最新の科学的な知見を基に書かなければならないので、やや難しい説明もありますが、「免疫を高める」ことに興味のある人は我慢して読み進めて下さい。このコラムは免疫の門外漢の人にも分かるように、ブルーバックスのようなセミプロの内容になってはいないので安心して下さい。
なお、このコラムは商用の目的は全く持っていないので、ネットでよく使われるSEO(検索エンジン最適化)なる方法は一切使っていません。SEOに従って書かれる記事や説明は、検索でのヒット効率を最優先するために、往々にして科学的知見を蔑ろにしてしまう可能性が否定できないからです。
免疫系についての簡単な説明
「免疫系」とは、自分で自分を守る二重の防衛システムのことです。免疫とは自分の体内にこれまでなかった異物を見つけ、攻撃・排除する機能です。その免疫システムには、生まれつき備わっている「自然免疫系」と、生後に外敵(病原体)と出会ってはじめて働きだす強力かつ特異的な「獲得免疫系」の二つがあります。
「自然免疫系」は生まれつき備わった常設部隊であり、四六時中、体を見守っています。
一方「獲得免疫系」は 敵との戦いで鍛えられた精鋭部隊です。敵が手強く自然免疫系だけでは守りきれなくなると、精鋭部隊である「獲得免疫系」の出番となります。自然免疫系がキャッチした敵の情報を分析し、その病原体の力を奪う抗体や感作リンパ球を作って攻撃を行い敵を駆逐します。しかも獲得免疫系は、戦った敵の性質をすべて記憶し、次回からはより早く、多くの抗体や感作リンパ球を作って、戦うたびに強くなります。これを「免疫記憶」と呼びます。
病原性が無いかあるいは弱い細菌やウイルスなどが少数で体内に侵入してきた時は、自然免疫系だけで、それらの病原体を殺して排除できます。ところが、病原性が強い細菌やウイルスなどが侵入してきた時や、病原性は弱いけれどそれらの病原体が多数侵入してきた時には、自然免疫だけでは対処しきれません。
獲得免疫の立ち上げには、おおおむね1週間以要しますが、特定な病原体に対して特異的に働き強力な戦闘力を持つ獲得免疫系が稼働することにより、はじめて病原体をせん滅して駆逐し、元の健康な状態に戻してくれるのです。
なお、自然免疫系で働く免疫細胞には、細菌やウイルスや異物などを食べてやっつける貪食細胞と呼ばれる細胞群があり、好中球、マクロファージ、樹状細胞がこれに当たります。特に、樹状細胞やマクロファージは、自分が取り込んだ病原体の情報を獲得免疫系で主役を演じているTリンパ球(T細胞)に伝えて、獲得免疫系をスタートさせます。
また、自然免疫系では、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)と言うリンパ球も働いており、ウイルスに感染した細胞や癌細胞を攻撃して殺し、体内でのウイルスの増殖や癌細胞の増殖をストップさせます。
獲得免疫系で働く細胞には、免疫反応を調節する司令塔であるヘルパーT細胞、ウイルス感染細胞を殺す細胞障害性T細胞(キラーT細胞)、ヘルパーT細胞の指令で抗体と言う外来異物と特異的に結合して外来異物の活性を奪う「抗体」と言う蛋白を作るBリンパ球(B細胞)があります。これらのリンパ球は、自分の担当の外来異物を極めて特異的に認識する能力が備わっています。獲得免疫が、外来異物に対して特異的、おかつ強力な攻撃を仕掛けるのは、こう言う仕組みがあるからです。
これから、お話しする「免疫を高める」生活習慣、食物、各種の免疫サプリメントは、こうした「免疫系」と非常に密接な関係があるのです。
では,次回をお楽しみに。