免疫を高める話 (2) 納豆の免疫制御作用
納豆は蒸した大豆を納豆菌(Bacillus subtilis var.(variant: 変種名)natto:この菌の発見は、矢部規矩治、須田勝三郎、澤村眞らの明治27年から38年の研究に依っている)を降りかけ、有酸素下で35度から45度で発酵させた食品ですが、抗生物質が発見される前から、赤痢菌、腸チフス菌、病原性大腸菌に抗菌作用を示すことが知られており、この抗菌作用はジピコリン酸であることが分かっています。
次に、納豆の健康効果(納豆菌発酵による機能性)について簡単にお話ししましょう。ネットの記事をいろいろと調べてみると(特に全国納豆協同組合連合会の記事が参考になります)、納豆には下記のようないろいろな効用を有する成分が含まれているそうです。
ビタミンE (美容・美肌・更年期・中性脂肪抑御)
カリウム (美容・美肌効果・高血圧予防)
ムチン (美容・美肌効果)
ポリグルタミン酸 (美容・美肌効果・免疫強化と制御)
ビタミンB1 (中性脂肪抑制・ダイエット・疲労回復・免疫力強化)
ビタミンB2 (美容・美肌・整腸・ダイエット)
ビタミンK (骨元気・老化防止・抗潰瘍)
納豆菌 (美容美肌・整腸・免疫力強化・風邪予防)
ジピコリン酸 (風邪・インフルエンザ予防・抗菌殺菌)
セレン (抗酸化作用・抗ガン効果)
これらの中でもポリグルタミン酸の効果が群を抜いているようで、老廃物などの排泄を促進するなどデトックス効果に優れており美容・美肌効果があるそうです。ポリグルタミン酸は、納豆のネバネバの主成分で、アミノ酸のひとつであるグルタミン酸が、鎖のように直鎖状に結合してできた天然のアミノ酸ポリマーです。このポリグルタミン酸は非常に分解されにくく、胃壁を守ったり、腸管で老廃物など体にとっては毒素といえるものの排泄を促進したりしてくれると言われています。また、ねばねば成分のなかには、ナットウキナーゼと呼ばれる血栓溶解酵素が含まれており、血液がサラサラになるそうです。
さて納豆菌とポリグルタミン酸の免疫や感染症に対する抵抗性についての科学的根拠を論ずる研究論文はどの程度出ているのでしょうか。PubMed検索をしてみると、下記のような結果になります。
(1) Bacillus subtilis natto (納豆菌)
「immunity」で検索:593報ヒット
「infection(感染)」で検索:1,152報ヒット
(2) polyglutamic acid
「immunity」で検索:88報ヒット
「infection」で検索:69件ヒット
従って、納豆と納豆菌の免疫調節作用や感染抵抗性増強作用については、乳酸菌と同様にPubMedに掲載されるに足る信頼性のある学術論文はかなりたくさん出ているものと言えます。そう言う観点では、納豆はヒトに有益な免疫制御作用を有していることは確実であるように思われます。
実際にこれらの文献の内のポリグルタミン酸の薬効に関する論文を数報読んでみましたが、マクロファージ(体内に侵入してきた病原体(特に病原菌)を捕食(貪食)して、ファゴソーム(食胞)と言う小胞に取り込み、その中で殺菌して分解する食細胞)という免疫細胞にポリグルタミン酸を作用させてみると、IL-6やTNF-aなどの炎症性サイトカイン(炎症に関与する細胞間の情報伝達タンパク)や個々の外来異物に特異的に強力な攻撃を仕掛ける細胞性免疫(Th1細胞や細胞障害性T細胞(Tc)が主役を演ずる獲得免疫系)の誘導に必要なIL-12の発現・産生を高めると言うことです(Lee et al., Exp Dermatol, 2013).
彼らの報告では、マクロファージの一種で、外来異物の有する成分の情報を、獲得免疫で働くT細胞に伝える働き(抗原提示)を担う樹状細胞は、ポリグルタミン酸の作用を受けると、マクロファージの活性化を引き起こすIFN-gと言うサイトカインの産生能が高まるそうです。また、マクロファージを納豆菌が含まれる培地で培養すると、マクロファージの殺菌能で働く活性酸化窒素(nitric oxide)の産生能が増強されると言う成績が、他の研究者によって報告されています(Xu et al., Microb Immunol, 2013)。これらの成績は、納豆には生体の感染防御免疫を強化する可能性が大きいことを示しています。
付言しておきますが、実験条件によってはポリグルタミン酸には抗炎症作用もみられるようで、マウスに投与した場合、アトピー性皮膚炎の症状が軽減されたと言う成績も報告されており、乳酸菌の場合と同じように、納豆でもその作用には、炎症を強め感染症に対する免疫防御系を増強する作用と、抗炎症に働き過剰な免疫応答や炎症を鎮静化するという二面性があるようです。