SFファンタジー小説や本格的SFと称する小説でしばしば登場するテレポーションがについて考えます。科学的な視点から厳密に考証してみると、テレポーション技術の開発は事実上不可能だと言う結論になります。詳しくは本文で。
SF小説の話 テレポーションは可能か?
SFファンタジー小説だけでなく本格的SFと称する小説でもしばしばテレポーションが登場します。然し、テレポーションなる技術が実際に開発できるのでしょうか。もし可能だとすれば、Aさんと言う人をテレポートするには、先ずはAさんの身体を構成しているいろいろな種類の全ての量子の状態を観測して確定しないといけません。そのデータを基に、人体を構成する全原子の状態を確定し、ひいては全分子の状態を確定して行かないといけません。なお細胞やら、組織やら、器官の状態は構成分子の状態から確定できます。体重60キロの人を構成する原子の数は約6 × 1027個とされています。これは6の1兆倍の1兆倍の1000倍 個と言う途轍もなく大きな数です。
テレポーションを行うには、先ずこの物凄く多くの原子のそれぞれの状態を一時に観測しないといけないのです。1個の原子の状態を観測してその値を確定するのに1秒かかるとすると、人体を構成する全ての原子の状態を観測して確定するのに、何と、2兆× 1億 年もかかるのです。宇宙の年齢が138億年ですから、この値は宇宙の年齢をはるかに超えてしまっています。もし原子を構成する素粒子(クォーク6種類、レプトン6種類、ボース粒子5種類)の状態までを観測して確定しないといけないのなら、それに必要な時間はさらに長くなってしまいます。
要するに、テレポーションと言う技術の大前提である人体を構成している量子や原子の状態を同時に把握することは不可能だと言うことです。その観測が済んだら、電磁波にその情報をデジタル化した形で乗せて遠く離れた別の位置に送り、そこで送られて来た量子や原子の状態についての情報を基に、量子や分子を元と同じ状態で構成し直して行く作業が必要になります。その後で細胞や組織や器官を構成して行くことになります。
量子の状態なら量子もつれの現象を利用すれば、超光速どころか瞬時のうちに宇宙の果てまで量子の状態が届ききますが、量子もつれはあくまでもここバラバラに存在している対の量子の間で起こる現象ですから、多数の量子が集まって複雑な相互関係をしているような場合には適用できないと思われます。量子力学の基本的な原理である不確定性理論も、原子や分子などのような素粒子間の複雑な相互関係が生じている場合には成り立たないとされています。その証拠には、マクロの世界では全てが観測される前に確定しています。観念の前に実在が在るのです。
要するに、超ミクロの世界とマクロの世界では話が違ってくるのです。
時空理論と量子力学の理論を統合した統一理論は未だに出来ていません。超弦理論がその突破口になると言う理論物理学者が多いのですが、時空理論と量子力学の理論との万人が認める形での統合はまだまだずっと先のことのようです。超弦理論の証明には、人類が扱えるエネルギーよりはるかに高いエネルギーが必要なので、その実験的証明は事実上不可能だとされています。
と言うことで、テレポーションと言う技術は、数百万年先の人類にとっても、その開発は不可能だと言うことです。だから、テレポーションを登場させるSF小説は、SFファンタジー小説と呼ばれて然るべきでしょう。ただし、正統派のSF小説がSFファンタジー小説より優れているとは言えません。SFファンタジーの方がより高い文学性を持っているような事例は多数見かけられます。小説は、読者が違和感なく納得することが出来る内容なら常識的な縛りは不要だと言うことなのでしょう。