俵 万智サラダ記念日が出てから久しいが、半年ほど前のNHKの特集番組では、昨今、そのサラダ記念日の短歌に触発されたのか、はてまた文学に目覚めたのか、TikTokなどの無内容・無思想な動画を観て喜んでいる或る種軽薄とも思われる世代の若者たちの中には、文学の面白さに気付いたらしいまともな者も多く、 万智の真似をした現代短歌作りに嵌っている者がかなりいるらしい。
 NHKの特集でそのうちのいくつかの和歌を紹介していたが、自分たちの感性とそれに関わる情景とを素直な視点で歌にしたものがあった。うーん。悪くはないなと思った。だけど、子規の「
歌よみに与ふる書漱石・子規往復書簡集を読んでいる人たちは少ないように感じた。
 サラダ記念日の一種独特の新しさを真似した短歌も良いが、上記の本を読んでから歌を作ってみて欲しい。きっと、もう少し深みのある歌が出来ると思う当然のことながら、国語の教師であった 万智は、そう言う歌人が教養として読むべき本はとっくに読破しているに決まっている。正岡子規の書いた書物など完読しているはずだ。

 短歌ではないけれど、テレビでも、俳人の夏木いつきさんが出ている番組で現代俳句を扱っている。さすがはプロ、他連田尾たちとは数段高いレベルの俳句の心と知識と技術を持っていらっしゃる。

 

 今回は、百人一首の中の有名な短歌をもじって、僕も現代風短歌を作ってみた。

 

風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける(新勅撰集)

蒼き海 暑中見舞いの 便りあり 夕凪近く 風の潮や

 

めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲隠れにし 夜はの月かな(新古今集

人混みに あなた見つけて 胸がキュン 昔と同じ 笑顔が眩し

 

あひ見ての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり(拾遺集)

一目惚れ 今は貴女の ことばかり プレイボーイで 鳴らした僕は

 

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ(古今集)

ひさかたの 空の蒼さに しづ心 洗濯物を 軒に干したり

 

月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど(古今集)

月明かり 人恋しさに 眼が潤む 独り飯炊く 秋の夕暮れ

 

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは(古今集)

ちはやぶる 神はあらねど 人の世は 情けに縋る 恋の通い路

 

あまの原 ふりさけ見れば かすがなる三笠の山に いでし月かも(古今集)

渋谷なる 街は新たに 模様替え 原宿あたりは もう古いかも 

 

花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに(古今集)

 誰だって 歳をとるもの 老いるもの 三十路の美貌 いつまで保つかな 

 

奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき(古今集)

 紅葉の 美しさなんて 忘れてた 百舌鳥のさえずり 落ち葉の小径 

 

田子の浦に うちいでて見れば 白たへの 富士の高嶺に 雪は降りつつ(新古今集)

麻雀屋 うちいでて見れば 酔い人の フラリと揺れて 行き交う姿
 

瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ(詞花周集)

宵の口 キッスしながら 墨田川 橋のたもとで 今日はお別れ

 

月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど(古今集)

お月さま もの哀しいのね 秋なのね 愛しの君は 長期出張

 

 今回は、百人一首に掲載の百首全部の歌を取り上げてみようと思っていたが、正岡子規の言うように同じような技巧に奔りもう一つ納得の行かない歌が多く、上記の12首しか選べなかった。