こんにちは。
虫の鳴き声が、明らかに変わりましたね。
秋の虫達が主役になってきています。
さて、本日は 森信三先生のありがたいお言葉です。
人間として生まれて
一体いかなる力によって、かくは人間として生をうけることができたかという問題について、今日まで考えたことがありますか。
われわれ人間にとって、人生の根本目標は、結局は人として生をこの世にうけたことの真の意義を自覚して、これを実現する以外にないと考えるからです。
そしてお互いに、真に生き甲斐があり生まれ甲斐がある日々を送ること以外にはないと思うからです。
しかしながら翻って考えるに、そもそもわれわれのうち、果たして何人が自分は人間として生まれるのが当然だと言い得るような、特別な権利や資格を持っているものがあるでしょうか。
もちろんわれわれは、この地上へ生まれ出る前に、人間として生まれることを希望し、あるいはそうした決意をして生まれて来たわけではありません。
いわんや、人間として生まれるに値するような努力や功績を積んだために、今日ここに人間としての生命をうけ得たわけではありません。
このようにわれわれがこの世に生をうけたのは、自分の努力などとは全然関わりのない事柄であって、まったく自己を超えた大いなる力に催されてのことであります。
否、それだけではないのです。われわれはこの世に生をうけた後といえども、そうとう永い間、自分が人間としてこの世へ生まれ出たことに対して、何ら気づくことなく過ごして来たのであります。
ところが私の考えでは、われわれ人間は自分がここに人間として生をうけたことに対して、多少なりとも感謝の念の起こらない間は、真に人生を生きるものと言いがたいと思うのです。
それはちょうど、たとえ食券は貰ったとしても、それと引き換えにパンの貰えることを知っていなければ、食券も単なる一片の紙片と違わないでしょう。
またそうと知らなければ、人によってはそれを捨てるかも知れず、また仮に捨てないまでも、それを食券として生かすことはできないでしょう。
同様に今われわれにしても、人生そのものの意義を知らなければ、人の形をして生まれて来たとはいえ、人間として真に生き甲斐のある生き方はできないと思うのです。
しかも人生の意義を知るには、何よりもまずこのわが身自身が、今日ここに人間として生を与えられていることに対して、感謝の念が起こらねばならぬと思うのです。
しかるにこのように人身をうけたことに対する感謝の念は、昔の人が言った「人身うけがたし」という深い感懐（かんかい：ある事柄に接して心に抱く思いの意味）から初めて発して来るものと思うのです。
しかるに、自分がこの世へ人間として生まれて来たことに対して、何ら感謝の念がないということは、つまり自らの生活に対する真剣さが薄らいで来た何よりの証拠とも言えましょう。
というのもわれわれは、自分が自分に与えられている、この根本的な恩恵を当然と思っている間は、それを生かすことはできないからであります。
これに反してそれを「辱い」（かたじけない：ありがたいの意味）と思い、「元来与えられる資格もないのに与えられた」と思うに至って、初めて真にその意義を生かすことができるでしょう。
ですからわれわれも、この「人身うけがたし」という言葉をもって、単にすぎ去った昔のことと思ってはならぬでしょう。
われわれ現代人は、今日日々の生活に追われて、このように物事を根本的に考えることを怠っていますが、今われわれは改めて、この言葉のもつ深遠な意義に対し敬虔な態度（けいけんなたいど：つつしみ深く謙虚な態度の意味）にたち還って、人生の真の大道を歩み直さねばならぬと思うのです。
大自然の中で無駄なものは一つとしてありません。
この世に生まれた一人として、この世に必要だから生まれて来た。
全てが、この地球上でつながっていてます。
人間も大自然の一部です。
人間として生をうけた意味を深く考え、この世に生まれたことに感謝の念を抱き、人間として真に生き甲斐のある日々を送る。
この世に生まれた「使命」を知り、人生の真の大道を歩むことが、生き甲斐のある人生です。
人生の真の大道とは、古典の『大学』に記されています。
二宮尊徳翁が『大学』を少年時代に読んで、自らの「使命」に気づきました。
余談ですが、二宮金次郎の銅像で二宮金次郎が持っている本は『大学』です。
「人身うけがたし」
先人からのありがたい お言葉であります。
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