「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」

 

 

 

 略して「給特法」と呼ばれるこの法律は、公立学校教員に給与の4%を教職調整額として支給する一方、時間外勤務手当を支払わないことを定めている。

 

 これが、公立学校教員の長時間労働の一因となっていると考えられることから、是正に向けて中央教育審議会(中教審)の特別部会が検討を行ってきた処遇改善案が5月13日に取りまとめられた。

 

 「教職調整額」を4%から10%に引き上げる。

 

 これが、大筋。他にも小学校での教科担任制の拡大や、若手を支援するための中堅向けのポスト新設なども同時に示されてはいるが、「定額働かせ放題」は、そのまま。

 

 この処遇改善案を評価する声もありますが、評価しない声も聞かれます。私は「働き方改革」「ライフワークバランス」という言葉が定着している令和の世の中に1972年に施行された上記法律が、堂々と生き残っていることは、不思議でならない。

 

 何故なら矛盾だらけだから。

 

 教員の「高度な専門性と裁量性」を理由に給特法は存在し、今回も特別部会は「教員はどこまでが職務なのか切り分けることが困難」とし、現行の仕組みは合理性があると結論付けた。

 

 裁量労働制と矛盾しませんか。「高度な専門性と裁量性」によるのであれば裁量労働制と同じです。しかし裁量労働制には健康・福祉確保措置等が使用者に義務付けられています。「どこまでが職務なのか切り分けることが困難」と言ってしまえば健康・福祉確保措置を否定しているようなものです。公立学校の教員には健康・福祉確保の必要はないと中教審は考えるのですかね。厚生労働省と文部科学省と管轄が違えど、この矛盾は看過できないと考えます。

 

 さらに、私学の教員は対象外。「どこまでが職務なのか」を私学の教員は切り分けられて公立の教員は切り分けられないという事のようです。その上、国立大学法人・公立大学法人の附属学校も対象外になりました。元々附属学校の教員は給特法の対象でした。しかし、2016年4月、国公立大学は法人化され附属学校は国公立学校ではなくなりました。必然的に所属する教員も公立学校教員ではなくなり、給特法の対象から外れました。この際幾つかの附属学校は対象から外れたことに気が付かずに4%ルールで給与を払い続け、後に労働基準監督署から是正勧告を受けて未払い残業代を支払っています。

 

 「どこまでが職務か切り分けなければ残業代払えないよね」

 

 つまり、切り分けは可能なんです。但し、それを認めてしまうと現場が(特に管理監督者が)大変なことになる。だから、何とかして給特法を維持したい。そのように思えます。

 

 でも、ワークライフバランスを重視する少子化の時代に給特法を維持していたら教員志望者はさらに減少します。大手企業と比較してどう考えても劣悪な労働条件。しかも長時間労働。優秀な学生に見向きさえされない、そんな時代が間もなく訪れそうです。