「資格より経験」の項でも書きましたが、社会保険労務士会に登録してから色々な研修や講演を生やWEB動画で受講できるようになりました。そこで感じ始めたことは「就業規則の重み」です。

 

 2020年の労働審判、労働関係訴訟の新受件数は、いずれも過去最高を記録しました。2021年は幾分かは低下したようですが、ほぼ2019年の水準。2020年の増加は新型コロナウイルス感染拡大の影響によるものと考えられ、高水準は続いています。

 

 この様な労働トラブルにおいて就業規則は重要です。今年に入って東京地方裁判所は、労働者が無期転換時の労働条件変更を不服とした裁判で、配置転換を適法と認めた一方で賃金の減額については減額の根拠となる就業規則や賃金規程が存在しないとして無効と判断しています。事業所側は業務内容の変更に応じて賃金額を定めていると主張しましたが、認められませんでした。

 

 また、解雇無効の判決も多くあり、その中には就業規則の文言が整備されていれば無効とならなかった可能性があるものも存在すると労働問題に強い弁護士が講演で話されていらっしゃいました。

 

 助成金申請に目を移せば、キャリアアップ助成金の様にそれに応じた規定などが就業規則に明記されていることが必要なものが沢山あります。内容が不十分だと不支給となります。助成金申請を扱っている社会保険労務士が研修で話されたことは、「原則、顧問契約を結んでいる事業先からの依頼しか受けない」「やむを得ず単発で受ける場合は、就業規則等受注する社会保険労務士が作成していないものが原因で不支給となった場合には責任は取らないとの念書を徴求する」といった姿勢でいるとのことでした。

 

 当たり前の話で、自分が作成していない書類が原因で不支給になった責任を負う必要はありません。

 

 この様に就業規則は「作って終わり」「労働基準監督署に提出して終わり」ではないのです。時代の変化に沿ったメンテナンスが必要なのです。それには常日頃から直近の判例や助成金の情報などを収集しなければなりません。

 

 「これを行政書士がやっていますか?」

 

 私が考える問題点はここです。勘違いされると困るので重ねて申し上げますが、資格や能力の優劣があると言っているのではなく、業務の範囲・守備範囲の問題です。

 

 今回で完結しようと書き始めたのですが、長くなってきたので日を改めます。