群馬県高崎市、JR高崎駅西口から西へ延びる大通り(愛称シンフォニーロード)を400メートルほど行ったところにある町である。

 

 高崎駅西口から北の方角に向かう路線バスは、シンフォニーロードを通り「あら町」交差点で右折する。右折した道路は旧国道17号線で昭和の時代からの幹線。「あら町」「あら町銀行前」など町名が付くバス停が続き、高崎在住在勤者にはお馴染みの町名である。

 

 高崎駅周辺は、高崎駅が位置する「八島町」や隣町の「連雀町」「橧物町」など古くからの町名が残り「あら町」もその一つ。江戸時代からあるらしい。

 

 江戸時代からある地名なのに「何故ひらがな」と思われた方も多いかと。元々は漢字表記でした。

 

 「新町」

 

 これで「あらまち」と読みました。

 

 何故、ひらがなになったのか? 2006年1月の平成の大合併に因ります。

 

 高崎市は、周辺5町村を編入(のちにもう1町編入)しましたが、その中に「多野郡新町」がありました。こちらは「しんまち」と読みます(区別するためこちらは「多野郡」とこの後は記します)。編入する町名をそのまま使用すると読み方は違えど「高崎市新町」が2か所存在することになってしまいます。どうするのか色々と意見は出たようです。「ひらがな表記にすると「荒町」とか「粗町」とかあまり町名としては良いイメージでない漢字を連想させる」等、「あら町」側からの反対意見はありましたが、最終的にはひらがな表記にすることで落ち着きました。

 

 「高崎市新町」が、一瞬にして別の場所に変わってしまう珍しい現象。ただ、大きな混乱には至らなかったと思います。「多野郡」にはJR高崎線が通っていて高崎駅から2駅東京駅寄りに新町(しんまち)駅があります。また、高崎駅西口から出るバスの次のバス停は新町(あらまち)です。地元民にとっては漢字は同じであるものの読みが違う「新町」がそれほど離れていないところに存在している事は、日常的なもので元々区別が出来ていました(因みに平成の大合併まで群馬県には「東村」が3つありました。これ等は郡名を付けて区別していました。「あずまむら」又は「あづまむら」と読みます)。

 

 高崎市には独特の読み方をする町名がいくつかあり(良い悪いではない)、「本町」は「もとまち」、「東町」は「あずまちょう」と読みます。ただ、地元民にとっては普通の事であり、「高崎市本町」と書かれていれば「たかさきしもとまち」と読むし「たかさきしもとまち」と言われれば「高崎市本町」と書くのが当たり前です。

 

 ラスクで有名な「ガトーフェスタハラダ」の本社が、「多野郡」にあります。商品のパッケージ等に書かれている会社の住所は「高崎市新町」。平成の大合併前にこの町名をすりこまれた私は頭ではわかっていても一瞬「あらまち」と読んでしまうことがあります。かつてはそれが普通の事だったのでご容赦を願います。