雪上のラストゲーム -禁断の黒龍襲拳- | Resistance to Despair

Resistance to Despair

絶望への抵抗

<注意!!>

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

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「美鈴と咲夜が合体して

“メーサク”といったところかしら。

そして、さらに…!」

 

合体した気がさらに上昇する。

 

逆立つガンメタリックの髪、

暗い色で燃え盛るオーラ、

そして、戦闘ジャケットの胸部には

黒っぽい龍の模様が現れた。

 

 

「これは、まさか黒龍襲拳…⁉」

 

その姿を見た紫が動揺する。

 

「コクリュウシュウケン!? 何だそれは…」と

ケンブラックが尋ねた。

 

「簡単に説明するわ。

あれは美鈴が幻想郷に来る前に私が抑え込んだはずの

俗にいう“裏の力”…。

それが、人間である咲夜との合体によって、

おそらく封印が解けてしまったようね

 

「それにしても、この気の膨れ上がり方と

禍々しさは尋常じゃないぞ。

どういうことだ…⁉」

 

「…今から70年ほど前、

台湾で生まれ育った美鈴は

地元の人間とも上手く馴染み、

平和な日々を過ごしていたところを

中国本土から軍事侵攻してきた

共産党との争いに巻き込まれ、

両親が犠牲になった。

その怒りで理性を失った彼女は

爆発的にパワーを覚醒させ、

たちまち杭州や上海、北京等の都市は

次々に火の海と化した。

その湧き上がる炎と黒煙のシルエットが

龍の形に見えたことから、

東亜エリアの間では『黒龍妖怪の襲来』と

怖れられたの…」

 

 

「そんなことならかつてのオレやレミリアだって…」

 

「あなたたちはザーマス様から

世界粛清の斡旋を受けていたし、

沈めるべきターゲットの範囲を

予めコンパクトに絞っていた。

一方、あの時の美鈴は世界中のあらゆる人類を

計算なしに殺し尽くしかねないような雰囲気で、

その力はあのフリーザの最終形態をも凌駕するほどの

圧倒的なものだったわ」

 

「なんだと…⁉」

 

「とにかくこのままでは幻想郷も含め、

地球上のあらゆる勢力バランスが崩れることを

危惧した私はスキマ空間を使って

彼女の行き過ぎた力を吸い上げ、

心を元の状態に落ち着かせてから

レミリア率いる紅魔館に就かせるために

この幻想郷へ連れてきたのよ」

 

「なるほど、そういうことか…」

 

「どうする、ブラックさん。

どう転んでも厄介な予感しかしないけれど、

このまま試合を再開していいの?」

 

「当然だ。

このオレに身を引くなんて選択肢は無い」

 

紫は小さく溜息をついた。

 

 

 

「審判との打ち合わせは済んだかしら?

この最高の力であなたに勝ってみせる!」

 

「…どうかな?

そう上手くいくとは限らないぞ」

 

意気込むメーサク相手にも

冷徹さを保とうとするケンブラック。

 

紅魔館の従者同士の合体により

かけ合わさったパワーから繰り出される

攻撃の重さは想像以上のものであったが、

妖怪の激しい怒りによってもたらされた

邪悪なまでの妖気と

人間の女性が持つ理性とのアンバランスさに

勝機を見出していた。

 

「外来世界のあらゆる人間どもを震撼させ、

紫でさえも脅威を覚えたこの力、

本気で振るえばケンブラックとて

決して倒せぬ敵ではない…!」

 

「確かに、一撃ごとの破壊力は

フリーザをはるかにしのぎ、

あの時のトワに匹敵するかもしれん。

だが、おそらくもって、せいぜいあと1分だ。

あと1分耐えられれば…!」

 

それぞれの思惑と拳が交錯した1分後、

メーサクの体内に異変が起き始めた。

 

「クッ…この全身が同時につるような感覚は…⁉」

 

体幹が微妙にブレた攻撃が

ケンブラックのダメージを半減させる。

 

「やはりな…気が付かないか?

いくらお互いの気(能力)や特性を

共有しようとしても、

妖怪が人間の身体を、その逆もまた然り、

そう簡単に扱いこなせるはずがないんだ」

 

「そんな…どうあがいても

私じゃあなたに勝てないというの⁉」

 

「まあな…だが、気を悪くするなよ?

オレは思った通りのことを言っているだけだ」

 

混乱する精神状態を懸命に振り払うかのように

メーサクは気を集中させ、手元に溜め始めた。

 

「こうなったら…せめて、あと一撃でいい。

この技に私の力の全てを賭ける!」

 

「そうくるか…。

ならば、オレも自分が最も慣れ親しんだこの技で

お前を止めてやろう」

 

両者のエネルギーは最高潮に達し、

試合開始前に紫が張った結界は

破裂寸前にまで膨張した。

 

 

「よせ!まさかこの幻想郷ごと

吹っ飛ばすつもりか⁉」と咄嗟に叫ぶ魔理沙。

 

霊夢も心配そうに紫に尋ねる。

 

「ねえ、コレ、本当に大丈夫なの⁉」

 

「…分からない」

 

紫にいつもの余裕ある振る舞いは失われかけていた。

 

~<ゲームセット>に続く~