雪上のラストゲーム -城戸倉 咲夜(キドクラ サクヤ)- | Resistance to Despair

Resistance to Despair

絶望への抵抗

<注意!!>

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

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「私を守ろうとしてくれる気持ちは嬉しいけど、

そんな簡単には頭を切り替えられないわ。

紅魔館有事の際には私も戦闘員の一人として

今まで訓練を積んできたわけだし、

もし、この先万が一

トワたちを上回る侵略者が現れたりしたら…」

 

「その時はまたオレと霊夢で足止めする。

それに、この前会った時にレミリアも反省していた。

『紅魔館の当主ともあろう者が

従者とその夫の力に甘えているようでは

この先面目が立たない』とな」

 

そういえば、レミリアとのご対面も

しばらくご無沙汰だったことを

ケンブラックは話しながら思い出した。

 

「お嬢様はとてもプライドが高くて、

あの時トワに吸収されて満足に闘えなかった自分を

責めているだけよ」

 

「…確かにそれも一理あるかもしれないが、

今後その紅魔館を支え続けていく上で、

必ずしも君がナンバーワンの強さで

毎回矢面に立つ必要はないと思わないか?

 

もう少し分かりやすく言えば、

プライベートでは市役所の戸籍に登録してある

名前どおり、

城戸倉 健(キドクラ ケン)の妻

“城戸倉 咲夜(キドクラ サクヤ)”として

振舞ってくれる時間を増やしたいということさ」

 

「いずれにせよ、

独断で即決できることじゃないから

少し考える時間をくれる?」

 

「ああ、全く急ぎじゃないから

好きなだけ考えてもらっていいさ。

必要があれば、オレからも仲間に説明する」

 

小さく溜息をついて、

咲夜は少し話題を変えようとした。

 

「ところで、明日の朝はパンとライス、

どっちがいい?」

 

「ああ、明日は午前中から

霊夢と修行する約束があるから

朝飯は自分で用意するよ」

 

夫の予定を詳しく聞いていなかったとはいえ、

今週末は久しぶりに二人で過ごすつもりでいた咲夜は

珍しく不満を露わにした。

 

「ねえ、ケンさん。

結婚してから特にケンカはしてこなかったけど、

平和を取り戻したこの幻想郷で、

仕事が忙しくなったのは

ある意味お互い様なところがあるし、

仕方ないと思うわ。

でも、今のあなたは久しぶりにこの家に来た

私と過ごす時間よりも、

霊夢と修行するほうが大切なわけ?」

 

「そんなことはない。

ただ、健全な家庭を維持するための経済生産と

幻想郷の平和を維持するための修行の両立を

実現することが目的であれば、

君も分かってくれていると思ってさ…

 

「でもね、意地悪な言い方で悪いけど、

さっきから聞いていると、

どうしてもあなたにとって都合良く

話を繋げているように思えてならないの。

ひょっとして、ケンさん、

私のこと邪魔になってる?」

 

「だから、そんなことないって…。

分かった、明日の修行は中止にするよう

霊夢に連絡して、

君と久しぶりにドライブにでも出掛けよう」

 

「そういうのは嫌なの!」

 

とうとう咲夜はカチンときてしまった。

 

「人に言われてから急に予定を変えて

合わせようとするなんて、

あなたらしくもない。

だからといって、

こんなことで取り乱す私も最低だけど…」

 

「困ったな。だったらオレはどうしろというんだ?」

 

「もういい。私、帰るわ」

 

「そうか、せっかく来てくれたのにゴメンな…」

 

ケンブラックにはその言葉を絞り出すのが

精一杯だった。

 

今はお互いに頭を冷やすことが最優先だと

自分に言い聞かせながら、

ケンブラックは空気が冷え切った玄関の外から

咲夜の車を見送った。

 

一方、5kmほど走った峠道のトンネル手前で、

咲夜の車は路肩に寄せて停まった。

 

「あんなこと言ったけど、

本当は引き留めてほしかった。

こんなことで泣くなんて

今夜の私、どうしようもなくサイテーね」

 

涙はしばらく止まらなかった。

しかし、咲夜が一人泣いている間、

他の車は一台も通らなかった。

 

 

翌日、自分の家と博麗神社の中間地点にある岩山で

予定通り、霊夢との手合わせを終えたケンブラックが

帰宅しようとした際、

無線にレミリアからの着信が入っていた。

 

何でも、今日の夕方18時頃に

家に伺いたいとのことである。

 

「珍しいな、わざわざレミリアから…。

昨夜の咲夜の様子が気になったのかな」

 

了承したケンブラックは短めの言葉で返信し、

帰宅後急いでシャワーを浴び、

綺麗にしまってあった服に着替えた。

 

~<試合の申し込み>に続く~