雪上のラストゲーム(最終試合) -十六夜咲夜とケンブラック- | Resistance to Despair

Resistance to Despair

絶望への抵抗

<注意!!>

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

 

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暗黒魔界の女王・トワの襲来と

魔王ザーマスの爆誕により、

霧雨魔理沙やアリス・マーガトロイド等、

歴戦の主力戦士が次々と闘いの犠牲になった幻想郷。

しかし、博麗霊夢とケンブラックが

それぞれ神懸かり的な力を覚醒させたことで

辛くも敵を撃破し、

ドラゴンボールで仲間を蘇生させることに成功した。

(※ストーリー詳細は2019年7月~2020年3月

『幻想郷サバイバル』参照)

 

今回はその壮絶な死闘が終結してから数カ月が経ち、

十六夜咲夜とケンブラックが、

お互いに戦闘よりも社会的生活に

意識ウエートが傾きかけていた頃の出来事である。

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「ああ、アーバン・インターが渋滞していたから、

また帰りが遅くなっちまったな…」

 

北東の都への配達を終えたケンブラックは

車で自宅に向かっていた。

 

 

トワ一味との決戦時、一時的に

休業せざるを得なかった分を挽回しようと

就業・作業時間を1日あたり平均1時間ほど延長し、

都や人里への各納品取引先には

時間調整を承諾してもらっていた。

 

その結果、その日の最終納品先と

それぞれ地元の職場で働く人々の

終業・帰宅するタイミングが重なり、

しばしば渋滞に巻き込まれるようになったのである。

 

「これからの配達は小型ジェット機にしようかな。

でも、今の車よりだいぶ燃料喰うだろうし、

着地してから店舗への荷物移動が面倒だな…」

 

そんなことをぼんやりと考えながら

やがて自宅に辿り着くと、

玄関前で待っている咲夜の姿があり、

横の駐車スペースには彼女の車が

泊められていた。

 

 

「ごめんな、遅くなって…」

 

「ううん、いいの。

私も5分前に着いたばかりだから」

 

「渡した合鍵持っているだろう?

先に入ってくれればいいのに」

 

「でも、ここはあなたが建てた家だから…」

 

幼いころから紅魔館に住み込みで働き続け、

メイド長になった咲夜の愛着と誇りを尊重し、

別居婚を選んだケンブラックにとって、

前回嫁と過ごした日から

かなり月日が経ったように思うが、

その表情はどこか曇り気味だった。

 

 

しかし、自分も疲れているのか

なかなか気の利いた言葉が出てこない。

 

「ありきたりのメニューで悪いけど、

カレーならすぐに用意できるから…」

 

「いやいや、作ってくれるだけでもありがたいよ。

だったら、その間にオレ、

シャワー浴びてきてもいいかな?」

 

咲夜は「うん…」とだけ頷いた。

 

 

 

二人で夕飯を終え、

ケンブラックは改めて礼を言った。

 

「ごちそうさま。

久しぶりに旨かった。

自分でもたまに一人で作るし、

外で食べることもあるけど、

咲夜のウデと味には絶対かなわないよな」

 

「どういたしまして。

お嬢様たちにお食事をお出しするのも

私の仕事のうちだもの。

定番料理の一式くらい満足に作れないようじゃ

紅魔館のメイドは務まらないわ」

 

「そうかい…?」

 

使った食器を洗い終えたケンブラックは

再び咲夜と顔を向き合わせる。

 

「あのさ…、今までと様子が違うような

気がするけど、何かあった?」

 

「何か…って、その…ケンさんも

最近仕事がかなり忙しそうだし、

私もいつ会いに来ればいいのか、

なかなかスケジュールが合わなかったから…」

 

「それはオレも闘いが終わってからは

とにかく仕事で安定した経済生活を、と

思っていたから

自分が最初に立てた計画以上に

ウエートをかけすぎたかもしれない。

紅魔館もこのところ配達以外では

ほとんど顔を出せていないし、悪かった。

そのことを踏まえ、一つ提案がある」

 

「提案?」

 

「ああ、今まで鍛錬を重ねて鍛え上げてきた

己の身に水を差すようで心苦しいが、

ぼちぼち君には闘いの最前線から

退いてもらおうかと思ってな…」

 

「なぜ、そんなことを…」

 

咲夜は意味が分からないといった表情である。

 

「確かに君は強くて美しい。

しかし、その力は紅魔館の中で唯一の

純粋な人間でありながら、

オレのように神の気を持たずして

当主のレミリアさえも超えてしまった。

もっとも、トワや魔王ザーマスとの闘いでは

その“炎の女神・ブルー”の力がなければ

あの絶望的な状況を打開できなかったし、

ベジータを説得して一緒に気を分けてくれたことは

最大限感謝したい。

ただ、自分の嫁にはあの時の魔理沙やアリスと

同じ目には何があっても遭わせたくないんだ」

 

内心、単なる自分のエゴかもしれないと思いつつも、

ケンブラックは懸命に胸の内を明かした。

 

~<城戸倉 咲夜(キドクラ サクヤ)>に続く~