人事部29年の社労士 吉崎です。
政府と経済界による経済財政諮問会議で「会社員の兼業・副業促進」提言が出されたことはご存知だと思います。GDP600兆円達成策の一つとして、能力やスキルの高い人材が活躍できる場を拡大し、中小企業や地域企業における人材不足を軽減する。なおかつ、働き手としては複数のキャリアを積めるなどの観点から、兼業・副業を促進しています。仕事を複数掛け持ちした場合の雇用保険の取り扱いなどを改善して、ガイドランを示すべきとしています。
法律学者の間では問題点も指摘されていますが、それでもこれを推進しようというのは、経済界の声に押されて、現実的な判断をしたのでしょう。同提言ではもっともらしい言い方をしているものの、結局は1社だけで働いていても、今までのように満足させられる賃金を支払えないから、どうぞ兼業して稼いでください、ということですね。
同一労働同一賃金の議論を進め、最低賃金を1,000円に引き上げ、格差が是正できたとしても、全ての階層の賃金を引き上げることはかなり困難です。結局、中所得層の賃金が目減りして、総額は一緒になるということでしょうから、中所得層を満足させるには副業で稼いでもらうしかないということ。
経済を活性化させて、賃金を増やす政策ですが、現実的でないことは分かっていて、早めに手を打っておこうということでしょう。
しかし問題は副業の仕方です。現在、多くの企業では就業規則で兼業を禁止しています。兼業禁止の就業規則の有効性を認めた裁判例では、「労働者がその自由な時間を精神的肉体的疲労回復のために適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労務提供のための基礎的条件をなすものであるから、使用者としても労働者の自由な時間について関心を持たざるを得ず、・・・以下省略」とされており、本業に支障が出るから兼業禁止は有効であるということです。
過重労働による脳、心疾患や過労死が問題になっているにもかかわらず、それを助長する政策を認めていいのか。副業を認める時間、日数を制限することになるでしょうが、本当に規制できるのか疑問です。もっと稼ぎたい、稼がなければ暮らしていけないという人に、歯止めがかけられるでしょうか?
結局求められるのは、働く人が自分にとって大切なことは何なのか、自分の生き方と真剣に向き合うことでしか答えは出ないと思います。自分の健康も人生も自分で守る。会社や国が決めることではありません。
会社の言うとおりに働いてきたのに、リストラにあって生活に困窮するという前例を見ているはずです。他人事と思わないで、自分のキャリアを早く確立すること。働く人一人一人が就社意識ではなく、本来の意味での就職意識を持つことが必要だと考えています。
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