メキシコに生産販売拠点を持つトヨタ自動車は海外への不要不急の出張自粛を決めると同時に、現地販売会社を当面、在宅勤務としました。また、ソニーは28日からメキシコ市の販売会社を休業しました。日本人が14人駐在しており、29日に営業再開時期を検討するということです。(NIKKEI NET参照)
政府は新型インフルエンザの水際阻止対策を本格化していますが、国内侵入の可能性はやはりあります。企業としてはどのような対応が必要なのでしょうか?
労働安全衛生法68条では「病者の就業禁止」を定めています。ここでいう病者とは、「伝染性の疾病その他の疾病で厚生労働省で定めるものにかかった労働者」を言います。感染症予防法でも、就業制限の規定がありますが、この制限にかかる感染症に従来のインフルエンザは該当しません。ということは、従来のインフルエンザは必ずしも就業禁止の必要があるとは言えません。
「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合、労働基準法上、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなくてはなりません。従来のインフルエンザにかかった従業員から「症状が軽いのに会社の指示で休まされた」と申出があった場合、休業手当を支払う必要があるのでしょうか?
従来のインフルエンザの場合は法律で定める就業制限にかかる感染症ではありませんから、「休業手当の支払いが必要になる」というのが一般的です。新型インフルエンザの場合はどうでしょう?国は「新型インフルエンザ対策行動計画」で新型インフルエンザ患者やその疑いがある者には状況に合わせて入院勧告、受信勧告を行うこととしています。ですから、これに従い感染者やその疑いのある従業員を自宅待機させる場合は、休業手当の支払いは不要と考えられます。つまり、従来のインフルエンザで従業員を自宅待機にする場合は休業手当が必要、新型インフルエンザで自宅待機にする場合は休業手当が不要ということになりますね。
政府の行動計画は鳥インフルエンザが変異した場合を想定したもので、今回の「新型」には適さない面もあると言われています。各企業とも最新情報をもとに臨機応変に対応する必要があります。世の中が新型インフルエンザの感染拡大(パンデミック)となってしまったら、何の手だてもなく従業員を通常勤務させることは危険です。パンデミックの状態で勤務中に新型インフルエンザに感染した場合、「業務起因性」(労災認定)や「安全配慮義務違反」(損害賠償請求)などが問題となる可能性もあります。従業員の生命と健康を守る姿勢が企業を守るということですね!