<周産期医療>現場負担、

放置のツケ 愛育病院が

指定返上へ

3月26日


 愛育病院が、妊産婦や新生児にとって「最後のとりで」
である総合周産期母子医療センター指定の返上を東京都
に申し入れた問題は、安心な医療体制を維持しようとすれ
ば労働基準法を守れない過酷な医師の勤務実態を浮き
彫りにした。

 多くの産科施設では医師の夜間勤務を、労基法上は
労働時間とみなさない「宿直」としている。宿直とは巡回
などの軽い業務で、睡眠も取れる。だが実際の夜間勤
務は、緊急の帝王切開手術をするなど日中の勤務と変
わらない。厚生労働省は02年3月、こうした実態の改善
を求める局長通達を出していた。

 しかし、全国周産期医療連絡協議会が08年、全国の
同センターを対象に実施した調査では、97%が「宿直制」
をとっていた。77%は夜間勤務明けの医師が翌日夜まで
勤務し、翌日を「原則休日」としているのはわずか7%し
かなかった。

 労基法を守ろうとすれば、医師を増やし、日勤-夜勤
で交代する体制を実現するしかないが、産科医は減り
続けている。06年末の厚労省の調査では、産婦人科
医は1万1783人で、96年から約12%減っている。
全国の同センターも、少ない医師でやりくりせざるをえ
ないのが実情だ。愛育病院のような動きが広がれば、
日本の周産期医療は崩壊の危機に直面する。

 産科の医療体制整備に詳しい海野信也・北里大
教授は「医療現場は患者に迷惑をかけないように
無理してきたが、労基署の勧告は『医療現場に
過度の負担をかけるべきではない』との指摘だ。
こうなるまで事態を放置してきた国の責任は重い」
と批判する。

【コメント】
大変な事態だと思いませんか?
医療業務従事者の献身的な行動によって、何とか
維持をされているという事実もう、一刻の猶予もな
いのではないでしょうか!

医療や介護といった社会保障の崩壊を防ぐために
も、医療介護に携わる方の業務改善に国がもっと
きちっとした対策をしないと、もう限界です!

業務命令権

わが社の経理事務の職員に対し、業務に

関連する研修を受講するように指示を出

したところ、特に理由もなく、受講を拒

否したい旨の申し出がありました。業務

命令として、もう一度研修を受講するよ

うに命じたいと思いますが、それには限

界はあるのでしょうか。


【回 答】

就業規則などに、「職員は会社の行う研

修を受講しなければならない」等の定め

がある場合は、この規定を根拠に研修の

受講を命ずることができます。また、こ

のような規定がなかったとしても、使用

者は、労働契約上、労働者に対して、必

要な技術等を修得させたり、提供すべき

労働力を良質化し向上させるために、研

修への参加を命ずることができるとされ

ています。

ただし、業務命令は、労働契約の内容や

就業規則に基づく合理的な命令であるこ

とが必要で、法律に違反していたり、労

働者の人格権を侵害するようなものであ

ってはいけません。


使用者は、研修の内容、必要性、期間、

場所、人選などについても十分検討し、

業務命令を発する場合には、労働者に対

し、これらのことについて十分に説明す

るとともに、労働者が拒否している理由

もよく聞いた上で、互いに理解し合える

よう話し合うことが大切です。



1、使用者の業務命令権
労働者が、働くにあたってどのような

義務を負うかは、それぞれの労働契約の

内容によって決まります。そして、労働

者が、労働契約の趣旨と内容に従った労

働を行う義務を、労働義務といいます。

(ここで、合理性のある就業規則の規定

は労働契約の内容になるため、これに基

づく相当な命令であれば、労働者は従う

義務が生じます。)また、労働者の労働

義務の遂行については、使用者は指揮命

令をする権限があるとされ、これを労務

指揮権と呼びます。

さらに、使用者には、労務指揮権を

中心とした広い範囲での業務の遂行全般

について、例えば健康診断の受診、企業

秩序を維持するための不作為命令など、

本来の労務の提供とは直接には関連はし

ない事項についても、労働者に対し必要

な指示・命令を発する権限があり、これは

業務命令権と呼ばれています。

2、業務命令権の範囲
 
使用者の有する業務命令権の根拠は、

労働契約にあるとされていますので、

業務命令が労働契約で合意されている

内容の範囲内であり、さらに業務上の

必要性や合理性の認められるものであ

れば、使用者は業務命令を発すること

ができると解されています。

したがって、直接に労働契約上の業務

とは関連しないと思われるような事項

でも、合理的と認められる範囲内での

付随的な業務であれば、労働者は、

正当な理由がない限り、業務命令に従わ

なければなりません。ただし、労働者の

人格権を侵害するような業務命令や、

労働基準法などの法律や労働協約に違反

する業務命令は認められません。

3、労働者が業務命令に違反した場合
労働者が、正当な理由もなく適法な業務

命令に従わないような場合は、業務命令

違反や職場規律違反と評価されて、懲戒処

分の対象となる可能性もあります。しかし、

その懲戒処分が命令違反の程度との関係で

不当に重いと判断される場合は、処分は

無効とされることもあり、また、懲戒処分

そのものが労使双方にとって重大なことで

もありますので、慎重な対応が求められます 



Q11 就業規則の周知義務違反と社員への適用

質問

従業員15人の会社の社員です。就業規則のことで

すが、採用の時に簡単な説明を受けただけで、

その後は社長が大事なものだからと金庫に保管し

ており見せてもらえません。


こうした中で、先日、ある社員が就業規則の規定

を基に意に添わない配転命令を受けました。就業

規則が社員に周知されていなくとも、就業規則に

定めがある以上、社員はこれに従うしかないので

しょうか。



回答

使用者が労働者に就業規則を書面で交付するなど、

労働基準法第106条第1項に規定する周知手続を

遵守していない場合、就業規則の効力は発生しな

いとされています。


解説


上で、具体的な労働条件は、使用者と労働者との

労働契約により定められることとなります。

しかし、通常、使用者は、労働条件を統一的かつ

画一的に決定するため、個別の労働契約を締結す

る代わりに、あらかじめ労働条件や職場規律に関

する事項を定型的に定めており、この定めが

「就業規則」です。

のような定めは、会社に労働組合がある場合は

労働協約によることもありますが、労働組合が

ない場合は就業規則が労働条件等を定める唯一

のものとなるため、たいへん重要なものです。

2、就業規則の法的規範性
就業規則の法的性質について、判例では、就業

規則は合理的な労働条件を定めている限り事実

たる慣習として法的規範性を有するとされてい

ます。

この考え方は、保険契約等で使われる約款理論

(「契約内容の事前の開示」と「契約内容の合

理性」を要件に契約としての拘束力を認める考

え方)を労働条件を定型的に定めた就業規則の

法的性質論に応用したものとして、学説でも支

持されています。

このように、就業規則に法的規範性が認められ

ることから、就業規則が合理的な労働条件等を

定めている限り、労働者は就業規則の内容の知

・不知や、これに対する個別的な同意・不同意

の如何を問わず、当然に適用を受けるものとさ

れています。

3、就業規則の周知手続と効力発生
労働基準法第106条第1項に定める就業規則の

「周知義務」が就業規則の効力発生要件であ

るか否かについては、判例、学説上見解が分か

れていましたが、最近、これに関連した重要な

最高裁判決が出されました。




フジ興産事件判決において最高裁は、

「周知義務」について、「就業規則が法的規範

としての性質を有するものとして、拘束力を生

ずるためには、その内容を適用を受ける事業場

の労働者に周知させる手続が採られていること

を要する」として、同周知義務が就業規則の効

力発生の要件であることを明示しました。

労働条件の不利益変更や懲戒処分等において

就業規則との関係が問題になることが多い中で

注目されています。


以上



1、 就業規則の重要性
法律で定められた労働条件の最低基準を満たした