くろべえのメモ帳。 -2ページ目

くろべえのメモ帳。

名古屋の某社労士事務所で勤務社労士をしています。日々の備忘録として語ってます。

少し前の話題になるが、トヨタ自動車が今まで専業主婦(夫)の配偶者をもつ社員に対して支給していた配偶者手当を廃止し、その原資で子供手当を増額するとの方向で労使合意をした。

メディアやネットの反応を見ていると、概ね好意的なようだ。

私もどちらかと言えば配偶者手当の廃止には賛成だ。ただ、子供手当や住宅手当といった業務や成果と全く関係のない属人的な手当の存在自体、個人的には正直良くは思ってない。

なぜなら、結局配偶者にしろ子供にしろ住宅にしろ、これらの手当は実質的には男性向けの手当だから。

子供手当は通常「社員の所得税上の扶養に入れている子供」が対象となるし、住宅手当は「住民票で世帯主であること」が支給の要件となっている。

シングルマザーだったり、妻の収入が夫よりも圧倒的に高いケースは別として、大半は夫婦の収入が同等だったりむしろ妻のほうが多少上回るケースですら、世間体として「一家の大黒柱は夫」としていることが多いように思う。そうしないと「どうして?旦那さん甲斐性ないの?」と好奇の目で見られるからだ。

もともと、家族手当のような属人的手当の歴史は昭和の高度成長期にまでさかのぼる。企業で働くと言えば、男性ばかりだった時代だ。男性社員のほぼ全員が結婚する=専業主婦を養い、いずれ子供も養うという家族観の中では、結婚を機にますます仕事にまい進してほしいという思いを込めて、また結婚を機に仕事を辞め、内助の功として夫を支える奥様に対するお手当として、配偶者手当の意義は大きかった。画一的なライフスタイルしかなかった時代においては公平な手当として機能していた。

日本の経済成長を支えたモノ作り等の労働集約型産業から、知識集約型産業へとシフトし、個人の生産性の格差はますます広がっている。にも関わらず、配偶者手当に代表される属人的手当の比重が高い給与体系では、昔ながらのライフスタイルを選択している生産性の低い社員が、生産性の高い独身社員の待遇を上回ってしまう現象が起こりうる。

また、企業として社員の子育てを支援する、というとイメージ向上にはなるだろうが、その恩恵にあずかれるのは結局男性社員だけだ。男性以上に活躍する女性社員にとっては面白くない話だ。

ならば、所得税の扶養を要件とせず、子供をもつ社員全てに手当を支給すれば公平か。なお悪い。幼い子供を持ちながら働くということは、少なくとも旧態依然とした職場ルールの中においては生産性を著しく低下させ、周囲にも負担をかける。周囲は同僚の子育てのしわ寄せを受けているのに、子供のいる社員には手当が出ているなんて納得のいくはずがない。むしろ同僚のサポートに対して手当を支給してあげたいくらいだ。

結局、特定のライフスタイルを選択した者だけが得をする手当など全て廃止すべきだと個人的には思っている。給料は、業務内容や責任、成果に対してのみ、公正な形で決まるべきである。

そして社員の子育てを支援するというのなら、最も有効なのは働き方に柔軟性を持たせることだというのが私の考えだ。これは男女関係なく、子供の有無に関係なく全ての社員が対象となる。フレックス制度や在宅勤務制度を効果的に運用していくことで、子供がらみの欠勤による同僚へのしわ寄せはかなり軽減できるし、夫の子育て参加も劇的にやりやすくなる。

最近は、業種によっては今や女性のほうが多数派だったり、エース社員といえば女性ばかり、という職場も多く目にするようになった。最も生産性の高い30代は、子育て期間の真っ最中でもある。そして、彼女達にとってのインセンティブはお金ももちろんそうだが、決してそれだけではない。

職場にとって最も貢献度の高い人が最も手厚く処遇されるよう、給与体系にとどまらず人事制度全体の見直しの時期に来ている。