昨年8月に成立した「女性活躍推進法」では、従業員数301名以上の大企業に対し、職場内における男女の格差を分析、是正するための「行動計画」を策定、公開することが義務付けられた。
大企業とはいえ多くの日本の会社では職場における男女の格差は多かれ少なかれ必ず存在する。男女は別の生き物で別の役割を持つのだから違いや格差はあるのが当たり前、という意見も根強い(というか一般的)。この「行動計画の義務付け」が実際に中身を伴った社内の風土改革につながるかどうかは甚だ疑問ではあるが・・・。
そんな中。昨年11月に発表された厚生労働省雇用政策研究会の「2030年までの労働力需給推計」によると、今のペースで人口減少が進むと15年後の2030年には就業者数が790万人減少するという。2014年比でいうとマイナス12.4%の減少だ。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000105744.html
一方で、今後実質経済成長率が2%、また若年者、女性、高齢者で一定の労働参加が進むという楽観的なシナリオで計算すると、182万人(2014年比マイナス2.8%)に抑えられるらしい。
ニート・フリーターはともかく、子育て中の女性や第一線を退いた高齢者についても、好む好まざるに関わらず働いてもらわないと国力を維持できないのが今の日本なのだということだろう。
年末に、厚生労働省の女性活躍推進特集ページ(webサイト)に、「一般事業主行動計画策定支援マニュアル」がアップされた。推進法で求められている「4つの基礎項目」の分析方法、自社の課題へのブレイクダウン、行動計画の立て方のヒントが非常に具体的にわかりやすくまとめられているので、まだ策定していない企業の担当者の方は是非参考にしていただきたい。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000107833.pdf
推進法においては、対象となる企業に対し「4つの基準」で女性活躍のレベルを分析することがまず求められる。
1.採用した労働者に占める女性労働者の割合
2.男女の平均勤続勤務年数の差異
3.労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
4.管理職に占める女性労働者の割合
理想は、1.2.4.全ての項目で男女の格差をなくすことだ。
所管であるが、1.については大半の企業で格差はほぼないように思う。むしろ採用段階では女性のほうが優秀だから、能力で採用したら女性ばかりになってしまう為男性には下駄をはかせて採用しているという人事担当者の声も聞く。
2.については企業によって大きく差が出る。体力のある大企業となると、時間に制約のある子育て中の女性社員に配慮し、残業のない責任の軽い職務に異動させることもある。対象の女性社員によっては「女性に優しい会社」と喜ばれることも多いが、いわゆる「マミートラック」と呼ばれるもので責任を伴う仕事によるスキルアップの機会をも失うこととなり、それを選択している限りキャリアアップや昇進は望めない。「ゆるキャリ志向」と呼ばれる女性には好まれるスタイルではあるが、このスタイルを男性が選択することはまずありえない。
体力のない会社ではこの「ゆるキャリ」のパスすら用意することはできないため、これまで通り残業をこなすか退職か、の二者択一を迫られることが大半だ。
その結果、いずれにしても子供のいる女性が「4.管理職」までたどり着けるのは大企業とはいえほとんどない。
昇進できなくても仕事を続けられるならそれでいい、という考え方もあるが、問題はこのような社員が増えれば増えるほど、それ以外の社員の働き方がブラック化するという点であり、企業の全体からすると持続可能な働き方では決してない。
2014年春、資生堂が「短時間社員にも夕方や土日のシフトに入ってもらう」との「働き方改革」を発表し、大きな関心を集めた。女性社員の多い資生堂では、要するに「ゆるキャリ派」が増えすぎた結果業務が回らなくなったということだ。夕方以降や週末は業務のかきいれ時であるにも関わらず、多くの女性社員は出勤しない。一部の社員のワークライフバランスを重視すれば、繁忙期は人手が足りず、平日の日中は余剰人員を抱えることになるのは明らかだ。
資生堂の「働き方改革」が広げた波紋の裏側
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/261748/121600003/
(2015年12月21日(月)日経ビジネス)
資生堂の対応には賛否両論あるだろうが、個人的には正しい決断だと思う。社員が介護や子育てと両立できる体制を作るということは、一部の人間だけを特別扱いすることではなく、仮に社員全員がその働き方をしても企業の生産性を維持できなければ意味がない。そのためには子育て中の社員であっても子供に負担をかけない範囲での歩み寄りは必要であるし、パートナーの理解や協力も必要だ。
「旦那の仕事が忙しくて協力は期待できない」という女性が非常に多いのだが、個人的にはもっと自分の仕事にプライドを持てと言いたい。ご主人の仕事に責任が伴うのと同じように、あなたの仕事にも責任が伴うのである。ご主人のキャリアアップのためにあなたが協力するのと同じように、ご主人もあなたのキャリアのことを真剣に考えなくてはいけない。
今の流れでは、所得税の配偶者控除や国民年金の3号被保険者制度もなくなるのは時間の問題だ。良いか悪いかは別として、女性が職場において中心的役割を担い、経済的にも自立すべきという方向性はもう変えられないだろう。
今の働き方では、長時間労働や過重な責任から逃げ場のな男性が疲弊し、心や体を壊している。なぜ仕事のために鬱になったり過労死しなくてはいけないのか。男性も女性も同様に社会で活躍をし親としての責任を果たせる社会とは、社会全体での長時間労働を是正し全ての人が働く喜びを実感できる社会であってほしいと切に願っている。
