前回の記事の続きです。

このシリーズは、正しい解説ではなく、「いかにして正解肢にたどり着くか」、
という観点から解説を試みています。

では、改めまして、平成23年度 労働一般常識の問題です。

---------------------------------------------------------------------

次の文中の [   ] の部分を対応する選択肢群の中の最も適切な語句で埋め、
完全な文章とせよ。

 日本企業の人事賃金制度は、第二次大戦後、何回かの大きな節目を経験し
ながら変化し、現在に至っている。第二次大戦直後に登場し、その後の日本
企業の賃金制度に影響を与えたのが [ A ] である。戦後の混乱期の中で、
「食える賃金」の実現をめざして提唱された。
 1950年代になると、年次別学歴別賃金制度が主流になる。当時の新入社員
の属性を基準とした仕組みは、一定の納得性を持って受け入れられた。
 1960年代初め、当時の日本経営者団体連盟(日経連)は、賃金の「近代化」
を目指して、 [ B ] を導入することを大きな目標として掲げた。同じ業
務であれば誰が担当しても賃金は同じという仕組みは合理的だと考えられた
が、日本企業の労働実態と合わなかったために広く普及することはなかった。
 1960年代後半になると、年次別学歴別賃金制度の限界が見えてきた。日経
連は、大企業の人事課長クラスをメンバーとする研究会を立ち上げ、その研
究会の成果を1969年に [ C ] として出版し、その後の人事賃金制度の基
準を作った。
 1970年代以降、 [ D ] が日本企業の人事制度の主流になる。この仕組
みは、従業員の能力育成を促進する効果を持っていたが、1990年代初めのい
わゆるバブル崩壊とその後の不況の中で、能力の高まった従業員にふさわし
い仕事を用意できないために、賃金額が企業業績への貢献を上回るという問
題を発生させた。
 この問題を解決するものとして期待されたのが [ E ] であったが、企
業業績への貢献を客観的に測るのが難しいという新たな課題を発生させた。

<選択肢>

[ A ]
①恩給制度
②電産型賃金制度
③年俸制度
④俸給制度

[ B ]
①職務給制度
②定額給制度
③歩合給制度
④役職給制度

[ C ]
①『職能資格基準のつくり方』
②『職能資格制度と職務調査』
③『職務分析・調査入門』
④『能力主義管理』

[ D ]
①仕事給制度
②職能資格制度
③職務等級制度
④役割給制度

[ E ]
①勤続給制度
②成果主義的賃金制度
③定期昇給制度
④年俸給制度

---------------------------------------------------------------------

前回までで、空欄A~Eについて、段落ごとのポイント整理が終わりました。

今回は、空欄A~Eについて、正しい選択肢を選んでいきます。

その際、必要となるのは、

1)全体のストーリーを考える
2)前後の文脈から判断する
3)一般常識から判断する


の3つです。

---------------------------------------------------------------------

空欄Aがある第1段落のポイントは以下のとおりです(前回分析より)。

第1段落目(空欄A)
・時代:第二次大戦直後
・制度:(空欄A)
・特徴:「食える賃金」を目指した

そして、選択肢候補は以下の4つです。
①恩給制度
②電産型賃金制度
③年俸制度
④俸給制度

例のごとく、消去法による絞り込みをかけますが、今回の問題の場合には、
先ずは「全体ストーリー」を考えなければなりません。

今回の問題は、空欄A~Eについて「賃金制度の歴史」について述べたもの
であることが分かっています(前回の分析より)。

つまり、空欄Aについても「賃金制度に関する選択肢」が入ると考えられ、
「①恩給制度」は明らかに対象外であることが分かります。
また、「④俸給制度」ですが、そもそも「俸給」とは給与自体を表す用語であり、
賃金制度を意味する言葉ではないため、これも対象外となります。
(しかし、やや判断は難しいですね)。

また、時代背景を考えると「③年俸制度」は不適当であると考えられます。

すると、「②電産型賃金制度」だけが候補として残ります。
しかし、聞き慣れない用語なので、他の選択肢と迷ったかもしれません。

空欄Aは、最も難易度が高いため、失点もやむを得ないと考えます。

---------------------------------------------------------------------

次に空欄Bがある第3段落のポイントは以下のとおりです(前回分析より)。

第3段落目
・時代:1960年代初め
・制度:(空欄B)
・特徴:近代化を目指した、「同じ業務」であれば誰が担当しても賃金は同じ

そして、選択肢候補は以下の4つです。
①職務給制度
②定額給制度
③歩合給制度
④役職給制度

ここは知識がなければ自信を持って正解肢を選びだすことが難しいのですが、
前後の文脈から判断」すれば、何とか正解に辿りつくことができます。

空欄Bに入る賃金制度は、「同じ業務であれば誰が担当しても賃金は同じ
という点に特徴があります。

つまり、「同一業務(職務)=同一賃金」ということです。

これにふさわしいキーワードは、「①職務給制度」以外にあり得ません。
他の3つの選択肢は、何か選び出すための根拠がありますでしょうか?

「③歩合給制度」は、仕事の量や出来高応じた賃金制度であり、
業務内容とは直接的な関係がありません。

また、「④役職給制度」は、役職に応じて賃金の範囲や手当を決める制度です。
役職という概念と、業務という概念は必ずしも一致しないため、これも不適当です。

ここで理解していただきたいのは、どんな難問であっても、
正解肢を導きだすための「ヒント=根拠」はあるということです。

今回の場合には、「同じ業務であれば誰が担当しても賃金は同じ」という
部分が「ヒント=根拠」となったわけです。

逆にいえば、「根拠の見い出せない選択肢は間違い」の可能性が高いのです。


空欄C~Eについては、次回以降に解説します。

---------------------------------------------------------------------

~本日の論トレ(論点トレーニング)~

以下の設問について、「誤っている箇所」を指摘してみましょう!

<平成20年度 労災保険法 第9問C>

延滞金の徴収の決定処分について不服申立てを行う場合には、当該決定処分
の処分庁たる都道府県労働局歳入徴収官に対する異議申立てをすることがで
きる。

           ・
           ・
           ・
           ・
           ・
           ・
           ・

誤り箇所の指摘だけではなく、正しい「解説」を加えてくださいね!

では、誤っている箇所を>赤字・下線で示します。

延滞金の徴収の決定処分について不服申立てを行う場合には、当該決定処分
の処分庁たる都道府県労働局歳入徴収官に対する異議申立てをすることがで
きる


本肢に掲げる処分についての不服申立ては、「厚生労働大臣」に対して、
「審査請求」を行います(一審制)。

所轄都道府県労働局歳入徴収官に対して異議申立てを行うのは、
二審制で行われる以下の処分ついての不服申立てに限られます。

a)概算保険料の認定決定
b)確定保険料の認定決定

つまり、本肢に掲げる「延滞金の徴収の決定処分」も含め、上記a)b)以外
の処分についての不服申立ては「一審制」で行われ、「厚生労働大臣」に対して、
直接「審査請求」を行うことができます。


択一式の点数が伸び悩んでいる方はコチラ!

質問回答サービスの詳細はコチラ!

他のブロガ―さんの記事はコチラ!

☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆

にほんブログ村 資格ブログ 社労士試験へ