今夜は、台風が2つ近づいてきているせいか、蒸し暑い。
あれだけ喧しかった夜の蝉も、すっかり鳴りを潜めて、今は、コオロギが静かに鳴いている。
蝉の声が止むと途端に自分の頭の中で、耳鳴りが鳴りだす。
まるで蝉が鳴き続けているようだ。
七年前にさかのぼるが、実はその頃、ある国家資格の試験勉強をしていた。
前々年、前年と不合格となり、その年、3回目の試験日である8月の終わりの日曜日に向けて、連日徹夜に近い状況で、勉強を続けていた。
ちょうど今頃の時期である。
私は、当初は、仕事に生かせると考えてこの資格の取得を目指したが、仕事をしながらの勉強に、そろそろ体力の限界を感じ始め、今回がダメなら、もうあきらめるつもりであった。
そのため、かなりの無理をして、睡眠時間を削って勉強していた。
しかし、昼間は仕事でくたくたに疲れて、帰ってから深夜に勉強を始めても、実際のところ、睡魔との戦いにかなりの時間を奪われ、正味の勉強時間は、あまり確保できなかった。
それでも何とか試験を無事に受け、合格発表の11月までの間の2か月あまり、精神的に落ち着かない日々を送ることとなる。
試験前は緊張しているから、意外と大丈夫なのだが、試験が終わってからの気の緩みと勉強疲れの肉体そして不安定な精神状態のこの時期に、体調を崩しやすい。
ちょうど合格発表の当日、右耳がおかしくなり、まるでエンジン音のような重低音が耳の中で鳴り始めた。
結果は合格だったので、ものすごくうれしいはずなのだが、耳鳴りが気になって、夜が寝られない状況になっており、合格よりも、自分の身体は一体どうなってしまったのかと気になって、あまり感激を味わう事ができなかった。
それから、病院へ行ってみたものの、「突発性難聴」だろうとの診断が出たのだが、一向に良くならず、病院を転々と変え、投薬も試したが、全く症状は変わらず、憂鬱な日々を過ごした。
ある日、通っている病院で、医者が耳鳴りは実はあまり発生のメカニズムが解明されておらず、精神的な要素もかなりあり、精神と身体の勘違いという事もあるのかもしれないという話をしてくれた。
患者にしてみれば、医者から治るかどうかよくわからないと無責任な事を言われ、いい迷惑な話なのだが、その時の私は、なぜだか全く受け止め方が違っていて、
「ああそうか、この耳鳴りは、自分の勘違いなんだ。」
と考えて、その日から、治療を一切やめたのだ。
相変わらず、耳鳴りは鳴っていたのだが、その日以降、あまり気にならなくなった。
そして、徐々に重低音の方はなくなり、現在では、蝉の声のような、シャーという音だけが残っている。
静かなところにいると、聞こえるが、遠くで蝉が鳴いているぐらいの感覚で、全く気にせず、日常生活を送る事ができている。
自己暗示で、耳鳴りが気にならなくなる。
この体験は、あくまで私の個人的なものであるが、このようなことが、世の中にはあるのだ。
今年も、試験日が近づいている。
私のように無理をして、体調を崩してしまう人たちが、現れない事を願う。