「そこ」はシロだ。
こだわりの軸足を置く場所ではない。
それに関して、
一番見てきた俺が言うのだから間違いない。
だが、
なんとかしてそこに「なにかある」としたい人間は
それこそ重箱の隅を穴が空くほどにつつき倒して
あれこれとインネンをふっかけてくる。
その労力を一旦留保して、
もっと別の情報を集めるなりして
視野を広くした方がいい。
急いで結果を出そうとすると
そこに先入観や損得やえこひいきのバイアスがかかって
正しい答えを出す前にハズレをつかんでしまう。
その、こだわりの強さは見習うべきかも知れないが、
真似したいとは思わない。
少なくとも俺のスタイルじゃない。
俺たちが求める答えはもっと簡単な場所にあるし
見つからないなら棚上げして、全く別のことを考えればいい。
結果的に迷宮入りするなら、それは誰にも見つけられない。
そこまで労力を割くだけ時間の無駄だ。
とことんこだわって、ものごとを掘り下げていくスタイルは
俺から言わせれば自己満足で、この組織からすれば背任行為に等しい。
もっとも、
そうやって掘り下げていく人たちがいたからこそ
科学技術や医学は進歩し、
かつてサルだったヒトはこの世界を作り上げ、
さまざまな病気を克服してきた。
だから、世の中にそういう種類の人間は必要だと思うし、
彼もそっちの人種なのだと思う。
面倒なので、彼をそこに留め置いて俺は先へ行く。
頭のいい人間だし、そこに答えがないことに気付けば、
彼なりの答え(言い訳)を見事な論調でまとめて、
あっという間に俺を抜き去っていくだろう。
そんな住む世界の違う人間に影響されることなく
その言いように苦笑のひとつも浮かべ、
俺はその間にいくつも現実的な答えを見つけて問題をクリアしていく。
1個の難問よりも10個の小問を解いていく。
それが俺のスタイル。