くじら | seekerのブログ

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雑感、皮肉、ココロモヨウ、好きなこと、お買い得、時事・・・
身勝手な俺が繰り出す、書いた本人もろくに覚えていない言葉の集合体

すっかり涼しくなった夕空を眺めている。

悠然と流れる巨大な雲に

夕日がオレンジの色をつけている。



あの雲の大きさはどれほどだろう。



空へと駆け上がっていく飛行機がその雲にならびかけるが

まるで比較にならない。



もうこの地上のしがらみを捨ててもいいかも知れない。



俺は全長20kmの白いくじらになって、空を泳ごう。

きっと

しばらくはマスコミが空飛ぶクジラを追い回すから、

やがて君も「俺」のことを知ることになるだろう。

でも、

君はそれが俺だとは気付かない。




境界線もガードレールもない空を

俺は一直線に君の街へと向かおう。



俺が空を行けば

地上の小さな人間たちはその足を止めて

この世界で最大の「いきもの」を見上げる。



俺から一人一人の姿は見えないけれど

遮るもののない空に浮かぶ俺の姿は

どこからでもきっと見えるはず。



人の姿を捨てた俺は

もう、君と交わることも

心を交わすこともできない。



それでも

君からいつも見えるように

俺は君の街の上に浮かんでいる。



ときどき

不意に姿をくらますけれど

それはいつもの気まぐれだから

心配はいらない。



台風の目を眺めに行っているかもしれない。

南十字星を見に行っているかもしれない。

成層圏まで上昇して、

地球の丸さを確かめに行っているかもしれない。





俺はいつだって自由だ。



そして

ずっとひとりぼっちでいる。