彼は若い。
前途有望な若者だ。
だが、「いただけない」。
まず朝の挨拶ができない。
小さな声で「すー」。
これが彼の挨拶だ。
長く休んでいて
久しぶりに出てきても
「すー」の後は
隣の女子と雑談。
「迷惑をかけました、
休んでいた間、自分の状況はこうでした。
自分の業務に関して指示ありますか?」
などといった、
ごく当たり前の礼儀もない。
関係者へはメールを多用し、
ちょっとした用件も
決して電話を使おうとしない。
「今すぐ確認しろ」
といってもメールだ。
いいから、電話しろ、というと
あっちが都合が悪い「かも知れない」
と、ワケの分からないことを言う。
新しい仕事を振ろうとすると
必ず「拒絶」から入る。
「いやいやいやいや・・無理っす」
おまえ、会社に何しに来てるんだ?
だが、強くは言えない。
言えば次は
「自分にそこまで期待されても無理だ、
そうまでしてここに居る理由はない」
などと言い出す。
彼の同世代から
「いいね」が100万件くらい集まるかも知れない。
規律とかルールとか
あって当然の『枠』を緩められ
「自分で考えて決めなさい」
と教えられてきた世代。
目上の人間は「ともだち」で、
会社は「サークル」で、
仕事は「趣味」で、
守るべきものなんかなくて、
自分がいかに快適に
楽して生きていくか、
それしか考えていない世代。
あの「三文字」を出してもいいが、
それでくくると気の毒な
「ちゃんとした人間」もいるからあえて出さないが、
彼を見ていて『そういう世代』を
象徴しているといことは、はっきりとわかる。
ま、そういうわけで
彼へ指示を出すのをやめた。
訊かれれば答えるが、
こちらから指示は出さない。
自分のやりたいことをやりたいだけ
ご自由におやりなさい。
俺からの無言の「戦力外通告」を
きっと理解出来なまま
遅かれ早かれ、彼はこの会社を去るだろう。
将来、こんな男を夫にする女は不幸だよね。
いや、それなりの女がくっつくか。