あらすじ: いつの世、どこの地であっても出会う、美しい少女と長い黒髪の男。しかし2人は恋人としての時間を過ごす事は無い。2人が出会う時、それは一方の死の時であるから…。
おすすめ: ★★★★★
1980年作品。
「プチコミックス萩尾望都作品集9・半神」版に収録されている物をいつも読んでます。
今は「小学館文庫・半神」で読めるみたいですね。
時々思い出しては読む萩尾望都作品で結構上位な『酔夢』。
たった20ページの短いお話。
ジャンル的には萩尾先生お得意の「SFファンタジー」ですかねー。
まぁあらすじにザックリ書いちゃってるけど、一応このあとネタバレありで↓
よくよく考えると、この恋物語の絶望感たるや凄まじい。
だって男が少女を見つけた時、彼女は既にうつ伏せに息絶えてるんだもん。
死と出会いが同時という。
しかもそれ永久反復って……どんな拷問よ~っ!?
そんな鬼畜運命な2人だけど、1度大きな変革の時を迎えるの。
近未来、木星衛星イオの研究所での出会いがそれ。
月生まれ火星育ちのレム博士と、地球生まれのガデン博士としての出会い。
ここではいくつか齟齬があるのよね。
それが私的にキュンポイント♡
この時、少女は初めて女性じゃないの。
レムは表現体はメイルで染色体はXX。
ヘルマプロディトスなのよねー。
んで、萩尾先生は両性具有をよく描くけど、その中でもこのレムは煙草ふかしてるわ言葉は荒いわでやさぐれててめっちゃ好きっ!
で…男の方の齟齬は、2人が繰り返し見る悪夢の本を正そうとしている事。
ガデンは夢を見るだけの今までの男とは違い、夢を遡って原因を見つけ、この繰り返しを変えようとしているのよね。
その結末だけど………。
ガデンは元凶の夢にたどり着き、少女の死を自らが楯になり止めたのだけど。
死は、違った形であらわれてしまう。
男の死という形で。
この反転によって現状が変わっちゃう。
相手の死を見届けるのは、ガデンでなくレムになってしまう。
うつ伏せの少女の死から、仰向けの男の死に切り替わるという…。
これはレムにとって逆に絶望的な結果だと思う。
でもこの悲恋の無限ループ、何故か繰り返し読みたくなる。
悲しく暗いお話なんだけど。
SF特有の乾いた岩や砂と、お伽噺みたいなドリーム感が織り混ざってるところが好みだからかな?
あ~この頃の絵柄が好きってのもある(80年だから『訪問者』『メッシュ』『銀の三角』頃)。
とまあ、たったの20ページで残酷な永遠を紡ぐこの作品。
傑作っ!!
つーか萩尾作品て傑作有りすぎて、生きてるうちに全部再読して想いを吐けるかわからないなぁ…。