「まだ怒ってます…よね…」
僕は自分の腿の上に座るジミニヒョンに背中から声をかけた。彼の体の前に手を伸ばして抱き寄せる。ちゃぷん、と湯が揺れた。大きな風呂場はビューバスになっていて、広い窓に面している。浴槽に座ると目線の位置に海が見えた。
「もう…怒ってない…」
僕の体の上でジミニヒョンは首を捻って、僕の顔を覗き込む。
「ほんとに繋がってなかった?電話」
テヒョンさんからの電話に出たふりをして、ジミニヒョンを抱いたら、案の定その後すごく怒られた。
「繋がってないです…」
テヒョンさんにジミニヒョンの声が聞こえちゃうから繋げるわけないです、という言葉は言わないでおくことにする。
「もう、ほんとに…びっくりして…恥ずかしかったんだから」
ぷく、と一瞬頬を膨らませるジミニヒョンが、成人男性と思えないくらい可愛い。
「すごく…可愛くて…ごめんなさい」
「え…っと…それって…僕、どういう感じだった?」
心なしか不安そうに見えるジミニヒョンに、胸の奥がとくん、と揺れた。
「声を我慢してるジミニヒョンが…超可愛かったです…」
正直に言うと、ジミニヒョンは真っ赤になった。
「変態!」
「うん、変 態です」
体勢を変えて僕に向かい合う形になっているジミニヒョンを抱き寄せる。
「変 態の彼氏…でもいいですか…?」
キスしたくなって、ちらりとジミニヒョンの唇に視線を落とすと、ジミニヒョンが唇を僅かに動かした。
「うん…ジョングクが好き…」
どきん、とした瞬間、唇が柔らかいものに触れる。僕は片方の手で、ジミニヒョンの頭を支えた。湯の音で、互いの唇がたてる僅かな水音を消したくなくて、動かないようにしながら唇をついばみあった。
あー…幸せすぎるんじゃないか…?
僕の体の上に乗ったジミニヒョンの唇から漏れる熱い息遣いを感じると、湯の中に浸かったままの体の温度がどんどん上がっていく気がした。
「ジョングガ…」
僕の体の変化に気づいたジミニヒョンが、くすりと笑って僕を見た。
ああ…シたばかりなのに…
呆れてるよね…?
僕は一瞬、ジミニヒョンの白い体に視線を落としてから、顔を上げて窺うようにジミニヒョンを見た。
「変 態だから…その…またシたくなっちゃいました」
「ふふっ…僕達いつになったら朝ごはん食べられるの?」
ジミニヒョンのいたずらっぽい笑みに、許しを得たように感じて、僕はジミニヒョンをぐい、と強く抱き寄せた。