*BL妄想(ジンシュガ)です
苦手な方は閲覧ご注意下さい
久しぶりにやって来た、勝手知ったるこの部屋で、部屋のあるじが帰ってくるのを待ちながら、先にシャワーを浴びた。寝巻きに着替えて寝室に入ると、目に飛び込んできたのは…
「でか…」
小さな子供くらいの大きさはありそうな白いぬいぐるみがベッドの片側に横たわっている。ご丁寧に、掛け布団をかけられていた。その顔は、元からだから当たり前なのだけど、すごく満足そうに見える。彼なのか彼女なのかわからないその白いぬいぐるみの隣にある空いたスペースを見て、俺は「ふん」と鼻を鳴らした。
いや、俺も相当だな…
ぬいぐるみにヤキモチってなんなんだよ…
確かに、入院したりリハビリしたりで、この部屋に来るのは久しぶりだ。その間に、自分のいつものスペースを陣取られていたのは、たとえ相手が無力なぬいぐるみだとわかっていても、少し癪に触った。
俺はぬいぐるみを掴むと、そばの椅子に置き、代わりにそれが寝ていたスペースに潜り込んだ。寝転ぶと、椅子の上に無造作に仰向けになった白いアルパカが目に入る。少し良心が咎めて、俺は起き上がってアルパカを椅子の背もたれにもたれかけさせた。
これでフェアだ…
何がフェアなのかわからないけど…
ひとりごちて、もう一度ベッドに横たわる。あるじのいないベッドはだだっ広く感じたけれど、すぐに狭くなるのはわかっていた。俺は束の間の広いベッドを楽しむことにして、目を閉じた。
「エーイ、もう寝てるのか?」
怒っているような、呆れたような、残念がっているような声が上から降ってくる。ゆっくり目を開けると、少しホッとしたようなジニヒョンの顔。
「寝てません」
「寝てただろ…わー、RJせっかく寝てたのに出されたのかー、かわいそうに」
ジニヒョンはわざとらしくそう言ってアルパカを撫でた後、ベッドにいる俺の隣に滑り込んでくる。
「お前、RJどかしただろ、かわいそうに」
「だって、俺の場所ですもん」
「っ…」
動揺したみたいに目を見開くジニヒョンが面白くて、ふ、と笑うと、ジニヒョンも笑う。
「お前なあ…入院してる間に甘いお菓子でも食べ過ぎたのか?」
「そんなわけない…あ、戻すんですか?」
ジニヒョンは横たわったまま、椅子の上のアルパカを掴むと、そのまま俺の背中の方に置いて、横たわらせた。
「一緒に寝るんですか?」
「うん。かわいそうだろ、ひとりだけ椅子で寝るなんて…」
ジニヒョンは、俺の背中側にいるアルパカをこちらを向くように横たわらせて、俺の顔を覗き込んだ。
「ユンギや…」
ジニヒョンの指が俺の頬に伸びてきてどきりとする。
「うち来んの、久しぶりだよな…」
低く呟いて顔を寄せてくるジニヒョンが、ピタリと止まったかと思うと、俺の背中に視線を投げて、やおら身を起こした。アルパカをまた掴んで、椅子にもたれかけさせて、またベッドに横たわる。怪訝な顔をする俺に、彼は言い訳がましく呟いた。
「子供には刺激が強いかと思って」
「ふはっ…」
俺は、困ったようなジニヒョンと、相変わらず満足そうに笑っているアルパカを見て噴き出した。
「エーイ笑うなよ」
「や、まだ見てますけどいいんですか?」
「おっと」
俺が、顔がこちらに向いた状態のアルパカを目で指すと、ジニヒョンは身を起こした。ベッドの俺たちが見えないように、アルパカを後ろ向きに椅子にもたれかけさせる。
「ふはっ…かわいそうじゃないですか?」
「仕方ないだろ…子供に見せられないことするんだから」
長い指先に顎を引き寄せられて、くちづけを受ける瞬間、目の端に映る白いアルパカの後ろ姿に「ごめんな」と心の中で呟いて、俺はゆっくり目を閉じた。
…fin.
タイトルは
「あるじはあーるじぇい?」
(ジンくん風オヤジギャグ風味←
と超迷ったYO!(・∀・)