「あ、それも確認してもらえると嬉しい…うん…うん、そう…」
僕の腕の中で、ジミニヒョンが電話の向こうの「仕事の人」と話すのを聞きながら、僕はつい先程の自分の行動を思い起こしていた。
危なかった…
キスするところだった…
でも…
仕事の電話と言いながら、ジミニヒョンが電話の向こうの人に「テヒョンア」と親しげに呼びかけるのを聞くと、胸がちりちりした。しかもまだ早朝と言ってもいいくらいの時間なのだ。この時間に気安く電話をしてくるなんて、仕事のつながりの人とはいえ、きっと相当親しい関係なのだろう。僕はおいてきぼりを食らったような気分になって寂しくて、ついジミニヒョンに触ってしまった。
「お前、何するの、いきなり」
電話を終えたジミニヒョンが、スマホをベッドの上に置いて僕の方を見た。口が尖り、瞳には軽い非難の色が見える。
あー、やばい…
ちょっと怒ってる顔も可愛い…
「ごめんなさい」
僕は素直に謝って、スマホの画面をもう一度確認しているジミニヒョンを背中から抱き寄せた。
「僕、変な声出ちゃうとこだったんだぞ…テヒョンに聞かれちゃうじゃん」
テヒョン…
その人は、ジミニヒョンにとって、どんな人なんだろう…
「なんで、聞かれたら困るんですか?」
僕の問いに、ジミニヒョンは、僕の腕の中で戸惑った顔で振り向いた。
「え…なんでって…その…取引先の人だし…」
「ずいぶん仲良さそうでしたけど」
昨日の夜、つい「ジミナ」と呼んでしまったとはいえ、僕なんか普段まだ敬語を使ってるのに、その「取引先の人」はタメ口だった。こんな朝早く、僕たちの邪魔をした、ジミニヒョンにタメ口の男。それだけでも、拗ねる理由になるというものだ。
「だってチング(同い年の友達)だもん…」
ジミニヒョンは本当に困ったように眉を寄せて、僕の腕の中で身じろぎして正面に向き直った。その困っている横顔を見ていると、申し訳ない気持ちと、もっと困らせたい気持ちが同時に沸き起こってきて僕は戸惑った。