やっぱり…「お手入れ」しておいてよかったじゃんか…
気にしないで、と言われたものの気になるものは気になるのだ。ジョングクの唇が、僕のおとがいをゆっくりなぞってゆくのを感じた時、僕はそう思った。
「っ…あぁ…」
ジョングクの鼻先が首筋を滑っていく。くすぐったくて顔をのけぞらせると、視線の先に、ぴたりと下ろしたシェイドの隙間から光が漏れているのが見えた。
わあ、朝だ…
朝なのに、こんな…
「ん…ジミニヒョン…」
ジョングクの柔らかな唇から体温が伝わってくる。昨夜愛し合った時の感覚が瞬時に戻ってきた。
「んんっ…あぁ…」
自分の吐く熱っぽい息が朝の雰囲気にそぐわない気がして、僕は内心気恥ずかしくなった。
「ジミニヒョン?」
心の内の戸惑いが現れていたのか、かぶさってくるジョングクを無意識に少し押し戻してしまったようだ。心配そうな顔になったジョングクを見て、僕は慌てた。
「あ、えっとその…なんか…朝なのに僕ら…」
「え?」
僕はちらりと窓の外に目を走らせた。
「その…昨日からっ…こんなことばかりしてるなあって…」
言った途端、僕はどきりとした。ジョングクが眉を寄せて、ものすごく寂しそうな、そして申し訳なさそうな顔をしたからだ。
「ごめんなさい…僕…がっついてますよね…」
「いや…ううん、それは…」
「そういえば、ジミニヒョン、ビーチも行きたいって言ってたのに、ごめんなさい…」
ジョングクは身を起こした。体温が離れて、僕は急にすごくさびしくなった。
「ごめんなさい…ずっと、我慢してたから…嬉しくて…」
切なげな顔で見下ろされて、胸がどきんと揺れる。
「ごめん、そうじゃなくて…なんか…朝だから…恥ずかしくて…」
「え…」
ジョングクの表情が少し明るくなった。胸の奥がきゅん、と震える。
可愛いな…
「わっ」
その時、僕のスマホが振動し始めた。画面に、お餅の材料を卸してくれている取引先の人の名前が表示される。そういえば、この時間に連絡すると言っていたような…
「あ…どうしよ…仕事の…出てもいい?」
窺うようにジョングクを見る。ジョングクはこく、と頷いて、僕にスマホを渡してくれた。
「はい、もしもし、テヒョンア?」
「あ、ジミナ!」
最近同い年だと分かった取引先の担当者、テヒョンの明るい声がスマホから聞こえてくる。