「ふたり、お似合いでしたね」
「うん…」
2人きりのエレベーター内でジミニヒョンに声をかけると、彼は頷いて、僕の腕に自分の腕を絡ませてきた。胸がどきんと跳ねあがる。
「ジ、ジミニヒョン…」
「なんか…ふわふわする…よ…」
ジミニヒョンは舌ったらずな口調で、ぎゅっと僕の腕にしがみつくようにして、僕に体重をかけてきた。
「酔いました?」
「ん…なんか2人になったら気が抜けて…」
ジミニヒョンが僕にぴったりとくっついたまま、僕を見上げた。お酒の香りがふわりと漂う。ジミニヒョンの体は酔っているせいかすごく熱く、瞳は潤みを帯びている。それを目にすると落ち着かなくなって、僕はエレベーターの階数ボタンの上にある階数表示パネルに目を移した。もうすぐ僕らの部屋があるフロアに着く。僕はドキドキしながら、ジミニヒョンから腕をそっと解いて、その腕でジミニヒョンを抱き寄せた。
「もう、着きますから…」
「ん…」
もう少し、僕らの部屋が下のフロアにあったら、僕はここでジミニヒョンにキ スしていただろう。しかし、幸か不幸かエレベーターは今、13階に到着した。ドアが開く。僕は動きが緩慢になったジミニヒョンの手をぎゅっと握って、誰もいない廊下を部屋へ向かって無言で歩いた。
あー、キスしたい…
ダメだな…
頭の中が…それだけに…
「ジョングガぁ…」
長い廊下の角を曲がったら僕らの部屋、というタイミングで、ジミニヒョンが小さく僕を呼んだ。
「どうしました…」
「キスして…」
立ち止まった瞬間、ジミニヒョンがぎゅっと抱きついてきて僕は焦った。
「ちょ、ちょっと待って…ここじゃ」
「…だめ?」
ジミニヒョンの潤んだ瞳が困ったように揺れるのを見て、僕はますます焦った。
こんなに酔ってたの…?
子供みたいに泣きそうになっているジミニヒョンが可愛い。
「部屋そこだから…」
促すように手を引っ張ると、小さな抵抗を感じた。ジミニヒョンが眉を寄せて足を踏ん張っている。僕はジミニヒョンの耳元に唇を近づけた。
「部屋に入ったらしてあげます」
囁くと、ジミニヒョンは微かに目を上げて僕を見た。その隙に、ぐいっとジミニヒョンを抱き寄せて、そのまま部屋まで連れて行く。カードキーで素早く開錠し、部屋の中へ滑り込むように入った。ガチャン、とドアの閉まる音を聞きながら、ジミニヒョンを抱き寄せて唇を近づけた。
「っふ…んぅ…」
唇が触れ合った瞬間、ジミニヒョンはぎゅっとしがみつくみたいに僕を抱きしめた。
「んっ…っふ…」
混ざり合う熱の中に、お酒の香りを嗅ぐと、酔ったことはないけれど、僕まで酔っていくような気持ちになった。ジミニヒョンの頭を支えて、舌先でジミニヒョンのやわらかな熱を味わうように動かすと、
「っ…」
声にならない吐息が耳をくすぐって、僕の体温もどんどん上がってゆく。
「んん…ぁ…ふあ…」
唇をきつく吸うと、熟れたチェリーみたいな香りがした。
…これが、ワインの香りなのかなあ…
「お酒…いっぱい飲んだんですね」
唇を離して、咎めるようにジミニヒョンを見つめた。ジミニヒョンの瞳はぼんやりとしていて、その焦点が僕にぴたりと合うまで僕は少し待った。