確かに、この人、全然酔わない…
3人で飲んでいるワインのボトルは2本目に突入しているというのに、頰が少し上気しているように見える以外にジミニヒョンに変わった様子はない。機嫌よくにこにこしながらジニヒョンとユンギさんの話を聞いている。
「あ、そういえば、この子、お前の音楽聴いてくれてるみたいだぞ」
ジニヒョンがユンギさんに僕を見ながら言う。
「あ、マジで?」
「はい、CD持っています…クラシックご出身なのにアルバムに収録されている曲が幅広くて…普通のクラシックの曲もすごくかっこよく弾かれるし…憧れです」
改めてSUGAに直接会っているという喜びが湧いてきて、僕は熱っぽく語った。
「…ありがとう」
照れくさそうに笑って、ぎこちなくお礼を言うユンギさんを、ジニヒョンがにこにこしながら見つめていた。
会は1時間くらいでお開きとなった。追加で頼んだお酒や食事はジニヒョンが全て会計を持ってくれて、僕らはレストランを出てすぐのエレベーターホールで2人にお礼を述べた。2人は同じ最上階にある、レストランの反対側にあるバーに寄ってから帰るらしい。
「今日はここに泊まるんですか?」
ジミニヒョンが聞くと、ジニヒョンは笑った。
「いやー、お前、それはさすがに気まずいだろ…従業員だし…」
「そっか、そうですよね」
「俺ん家に帰るよ」
ジニヒョンは言って、ユンギさんを抱き寄せた。ユンギさんは少し困ったようにジニヒョンを見たけれど、黙って身を委ねている。
「大人だぁ…」
僕が思ったことをジミニヒョンが言って、僕はジミニヒョンが本当に愛おしくなった。
「いや、大人だよ、そりゃ。俺のことなんだと思ってんだよ」
「えと…あの…わ、ワールドワイドハンサム…」
「お、昼間教えたやつ覚えたんだな、えらいえらい」
酔っ払って上機嫌に笑うジニヒョンがジミニヒョンの頭を撫でる。他の人がそんなことをしたら、たぶん僕はその人にむかついてしまうんだろうけれど、不思議とジニヒョンにはそんな気持ちにはならなかった。
「お、来たぞ」
下へ降りるエレベーターが到着し、僕らは乗り込んだ。
「ありがとうございます、おやすみなさい」
「おやすみ。また飲もう」
「はい!ありがとうございます」
笑顔で大きく手を振るジニヒョンと、真顔のまま、小さく手を振ってくれるユンギさんが見えた後、ドアが閉まり、僕はエレベーターの中でジミニヒョンと2人になった。