SUGAさんが困ったように辺りを見回し、僕たちに向かって口を開いた。
「もしかして聞いてないのか…全くジニヒョンは…」
「ジニヒョン?」
SUGAさんから突然出てきたジニヒョンの名前にびっくりする。「ジニヒョンってキムソクジンさんのことですか?」と訊こうとした時、レストランの入り口の方から声がした。
「あー悪い悪い、俺が先に入っておこうと思ったのに」
「ジニヒョン!」
ジニヒョンが言葉とは裏腹に、ゆっくり歩きながら僕らのテーブルへやってきた。シャツを身につけているものの、色はピンク色で、ラフな印象だ。
「あれ?仕事は?」
「終わった。今日早出だったから」
「知り合い?なんですか?」
矢継ぎ早に質問すると、ジニヒョンは面白そうに笑った。
「まあな…とりあえず一緒に座っていいか?テーブル、今日予約いっぱいだったんだ」
「もちろんです」
「席、移ってもらっていいか?」
ジニヒョンが目で指し示す内容を素早く理解したジョングクがさっと立ち上がり、僕の隣に席を移った。すぐにレストランのスタッフが、ジョングクの使っている食器を動かしてテーブルを整えてくれた。僕の前にSUGAさんが、その隣にジニヒョンが座った。
「いやー、急にすまん。このジミン溺愛彼氏さんが、俺のことあまりにも厳しい目で見るもんだからさ」
ジニヒョンが面白そうにジョングクを見ながら言うと、ジョングクは目を丸くして、慌てて手を横に振った。
「いやっ…そんなっ…ごめんなさい」
「いや、いいんだよ…それで、安心させようと思って」
ジニヒョンはにこにこ笑って、僕たち2人を交互に見た。
「へ?安心?って…」
「俺にも、いるから」
「へ?」
ジニヒョンがにこにこしたまま、隣のSUGAさんを見る。SUGAさんは呆れたようにため息をついたけれど、その頬はだんだんと赤く染まっていく。
「全く、ジニヒョンは…」
あれ…それって…
ジニヒョンはSUGAさんを抱き寄せ、そのまま一瞬、ぽん、と肩を叩いた。
「じゃーん、恋人のユンギだよ」
「へ?」
「声がでかいって」
僕が事態を理解する前に、真っ赤になったSUGAさんがジニヒョンの口を慌てて塞いだ。