韓牛のリブロースステーキは信じられないくらい美味しかった。ジョングクと「美味しいね」と言い合いながら、彼が同じメニューを選んでくれていてよかったなあ、としみじみ思った。同じものを食べて美味しいと言い合うことが、こんなに幸せなことだったなんて。
僕はデザートの桃のアイスとお茶を楽しみながらそんな風にぼんやりと考えていた。目の前の恋人は桃のアイスに無邪気な笑顔を見せていて、夕方、僕にあられもない声を出させた張本人だとは思えなかった。
あ…
ジョングクが、スプーンですくった桃のアイスの上にかかっているソースを訝しげな顔をして舐めた。
「あ、ブルーベリーだ」
瞬時に破顔するジョングクに、きゅん、となるのと同時に、僕の脳内は別のイメージで満たされてゆく。
あの舌で…さっき僕の…
一瞬だけ見えたジョングクの赤いその先端が目に焼き付いた。
な、何考えてるのパクジミン…
体が…
夕陽の差し込む部屋、ジョングクの力強い腕、重なる吐息。一気に思い出してしまって、体温がもどかしく上がっていく。
あんなことしたのに…
こんな風に、普通に過ごしてるのってなんか…
「どうしました…?」
ジョングクが心配そうに僕を窺う。
「あ…えっと…」
まさかこんなところで「シてた時のことを思い出した」などとは言えない。僕は焦って言葉を探した。
「その…部屋っ…帰ったらっ…な、何しよっか…」
ジョングクが目を丸くした。
わあ、僕…何言ってるんだ…
「な…に…しましょうか…」
ジョングクは呟きながら目を逸らして頬を染めた。
ああ…僕と同じこと、考えてるのかなあ…
どうしよう…すごく…
キス…
…したい…
僕が「部屋帰ろっか?」と言おうとしたとき、僕らのテーブルにレストランスタッフの方が近づいてきた。背後にもう一人、男性がいる。
「お待ち合わせのお客様です」
「えっ⁈」
僕はスタッフさんが案内していた男性を見た。白いシャツに、黒いジャケットを身につけている。その方も驚いたようにスタッフの方と僕らを交互に見ていた。
あれ…どこかで見たことが…
「SUGAさん⁈」
ジョングクが驚いたように声を上げ、僕はやっと、目の前の男性と、先ほどまでタキシードでピアノを弾いていたピアニストの姿をつなげることができた。
でも…なんでSUGAさんが…