SUGAのミニライブは、7曲ほどの演奏で終了した。生演奏が終わると、店内にはBGMが流れ出す。僕は名残惜しくて、彼がお客さんに会釈しながらレストランを後にする間、ずっと拍手を続けていた。
「はあ…よかった」
「うん、かっこよかったなあ」
ジミニヒョンもSUGAが去った方をちらりと見やりながら呟く。
全く、恋人の前で、他の男のこと、「かっこいい」とか…
しかしSUGAは本当にかっこいい。
僕も、ジミニヒョンにとってかっこいい人でありたいなあ…
「お、これ食べるの難しいね」
ジミニヒョンはアラビアータに入っているトマトと格闘していた。切れ目にチーズが挟んである小ぶりのトマトが丸い形のまま入っていたからだ。
「そのまま食べちゃおう」
ジミニヒョンはトマトの切れ目にフォークを刺すと、口元へ持っていき、かぶりついた。
あー、悩ましいビジュアル…
ジミニヒョンのぽってりとした唇が、トマトの表面に吸い付いて動く。破裂したトマトの赤い汁が唇からこぼれて、ジミニヒョンはそれを舌でペロリと舐めた。
うう、なんかやらしい…
知らず、腹の底がずくん、と疼いた。
って僕、何考えてんだ…
こんなきちんとしたレストランで…
やらしいのは僕じゃん…
悶々としているうちに、ジミニヒョンはアラビアータを平らげ、僕に向かって首を傾げた。
「どうした?食べないの?」
「た、食べます」
「ふふっ…ヒョンにくれてもいいんだよ」
ジミニヒョンはいたずらっぽく笑って、口を大きく開けて、フォークでちょいちょい、と口元を指す。もう柔らかいと知っている唇の奥に覗く赤を目にしたら、抑え込んだ腹の奥の熱がまた騒ぎ出しそうに感じた。
もう、抱き合ったのに、なんでこんな…
なんで翻弄されるんだろう…
僕はなぜか焦ってドキドキしながら、切り分けてフォークに刺したままのトマトとチーズを、ジミニヒョンの口の中へ押し込んだ。
「ん」
ジミニヒョンが目を丸くして、もぐもぐと口を動かした。その動く白い頰と唇にまた釘付けになる。
「冗談だったのに…ありがと。美味しいね、トマト…カプレーゼって言うのかなこれ」
「は、はい…」
にこにこ笑うジミニヒョンに、胸がどきんと跳ねた。
ああ…どうしよう…
抱き合う前より、好きになってるのかも…
僕は熱くなった頰を隠したくて、アラビアータに目を落とした。