2人でドアの近くまで歩いて行って「はい」と返事をすると、「ルームサービスのスイーツのお届けです」と返事が返ってきた。
そうか、スイーツ…お餅ケーキだ…
僕はジミニヒョンと顔を見合わせて、お互いに微笑んだ。僕がドアを開けると、男性のホテルスタッフが、トレイに乗せたお餅ケーキとポットを持って立っていた。
「お餅ケーキとお茶お届けです。テーブルにセッティングいたしますか?」
「はい、お願いします」
僕の後ろでジミニヒョンが嬉しそうに声を上げた。スタッフの方は一礼して室内に入ると、窓際のソファの前のローテーブルにお餅ケーキの乗ったプレートをそっと置いた。2人で食べるのにちょうどよいサイズのホール状のケーキで、すでに4つに切り分けられている。スタッフの方はカトラリーを並べながら、「お取り分けいたしましょうか?」とにこやかに聞いた。ジミニヒョンが頷くと、持ってきていた美しい白いお皿に1ピースずつ盛ってくれる。
その間僕は、スタッフの方の向こうに見えるベッドの上の掛け布が乱れているのが目に入って、落ち着かなかった。ケーキを持ってきてくれたのがジンさんでなくて良かった。また何かからかわれてしまいそうだから。
テーブルのセッティングを終えると、スタッフの男性はにこりと笑って「ごゆっくりお召し上がり下さい」と言い残して部屋を出ていった。僕は恥ずかしくなってジミニヒョンを見て言った。
「僕…ごめんなさい…お餅ケーキが来るから、ジミニヒョン『待って』って言いましたよね…?」
ジミニヒョンは首を振った。
「ううん…違うんだ…えっと…」
言うなり頬を真っ赤に染めていくジミニヒョンを見ると胸がどきんと跳ねた。
「僕も、忘れてたから…食べよっか?僕、お茶入れてあげる」
ジミニヒョンは笑って言うと、ティーカップをローテーブルに出して、ソファに座り、ポットのお茶を注いでくれた。僕は隣に座って、お餅ケーキの写真を撮った。
「すごく可愛いですね」
「ありがと」
僕が褒めると、ジミニヒョンは本当に嬉しそうに笑って、一口切って口に入れた。
「わあ、僕が作るのにそっくりだ」
「そうなんですね」
僕も食べてみる。優しい甘さが口の中に広がった。
「美味しい…この上のハートの部分も美味しいです」
「ふふっ…この上のデコレーションのとこさ…」
ジミニヒョンは、フォークを置いて僕の方を見つめた。
「お前のこと考えながら…作った」
「え…」
みるみるうちに、ジミニヒョンの頬が染まっていく。
「僕のこと…」
「テーマが愛だったから…その…さっき言っただろ…いろんな気持ちがだんだん大きくなって…」
ジミニヒョンは、ホールケーキの真ん中の小さなハートから、外に向かって大きくなっていくハートを指さした。
「最終的に愛になる…っていう意味なんだ
…」
恥ずかしいのか、伏し目になって、ホールケーキのハートをいじっているジミニヒョンを、ぐっと抱き寄せる。