うう、やっぱりめちゃくちゃイケメンだ…
ホテルのロビーで初めてジンさんに会った時、僕は恐れていたことが現実になったように感じて、内心勝手にいじけていた。ジンさんは顔立ちももちろんのこと、テキパキとチェックイン手続きをする姿も大人でかっこよく、こんな人には誰もが、ジミニヒョンだって惹かれてしまうだろう、と思った。ジミニヒョンがジンさんと話すときはとても親しげで、部屋に入って二人が抱き合ったときは、胸がちくりと痛んだ。「その子の俺を見る目が厳しい」とジンさんに笑われて、僕の心の内を見透かされたように感じて恥ずかしくなった。
「ご、ごめんなさい…あまりにもその…かっこいい方だから…」
僕が正直に言うと、ジンさんは破顔して満足そうに笑った。
「いやーよくわかってるじゃないか!あだ名はワールドワイドハンサムだから、よく覚えておくように」
「ふふっ…ワールドワイドハンサム」
面白そうにジミニヒョンが笑う。そして僕の背中に手を添えて、口を開いた。
「紹介するの忘れてました…ジョングクです。その…つきあって…る子です…」
ジミニヒョンの頰が染まっていくのを見ると、僕の頬も熱くなっていく。
「チョン・ジョングクです。よろしくお願いします」
「若いな、高校生?」
「高校生です」
「お前なあ…高校生に手出したのか?どこで出会ったんだ?」
ジンさんがジミニヒョンに聞くので、僕は慌てて言った。
「僕がナンパしたんです」
「ナンパかよ!」
「え、そうなの?」
ジミニヒョンが僕を見てきょとんとしたように首を傾げた。
うう、可愛い…
「えっと…僕がお餅の配達している時に、お客さんに絡まれてるところを助けてもらったんです」
「そうなんだ…なるほど…そういえば…餅、と言えば…」
ジンさんはニヤリと笑った。
「お前ら、もう2人で餅はついたのか?餅屋なだけに…なんてな」
「餅をつく」は「『そういう』行為をする」ことを指す隠語だ。僕はくらくらした。なんてこと聞くんだこの人…お餅屋さんのジミニヒョンにそんなこと…めちゃくちゃオヤジギャグじゃないか…
「へ?ジョングクは恋人だよ?バイトさんじゃないよ?」
あちゃ…
きょとんとしたままのジミニヒョンの声に僕はさらにくらりとした。
ジミニヒョン、文字通り受け取ってる…
…可愛いけど、ちがーう!!
ジンさんは一瞬びっくりしたように目を丸くして、また笑い出した。
「いや、だから…恋人だからこそ…だろ」
笑いの止まらないジンさんを見てジミニヒョンが困惑したように僕を見る。僕が「ジンさん」と注意するように小さく声を上げると、ジンさんは「ごめんごめん…いや、可愛いね…」と言いながらジミニヒョンの頭を撫でた。そして僕に向かって、
「お前、大事にしろよ」
と言ってニヤリと笑った。
なんなんだ…
ジンさん、全然、大人じゃないじゃないか…
