ジミニヒョンのお店へ続く道を、ジミニヒョンの手をぎゅっとつないで歩く。
チス先輩はあっという間にヤンウン高校のお飾りの大将を負かし、僕らの勝ちが決まった。チス先輩は祝勝会にジミニヒョンも誘ったのだけど、お店があるから、とジミニヒョンは笑って首を振った。チス先輩は僕に、「ジミンさん送っていけ」と言ってくれて、もとよりそのつもりだった僕は、チス先輩に大いに感謝した。少なくとも今日は、ジミニヒョンをひとりにはしたくなかった。
お店に帰る途中にある小さな公園の前で、ジミニヒョンはぎゅっと僕の手を強く握った。驚いてジミニヒョンの顔を見ると、なぜか恥ずかしそうに頬を染めている。
「ど、どうしました?」
「あの…話したいことあるから…寄ってこ?」
ジミニヒョンはちらりと視線を公園に投げてから、僕をじっと見つめた。
か、可愛い…
「うん…」
僕はドキドキしてしまって、返事もそこそこに、手を繋いだまま誰もいない公園に入って行った。小さな公園だけど、木々がたくさん生えており、その間を初夏の風が爽やかに吹き抜ける。僕たちはベンチに腰掛けた。僕たちが初めてキスした場所だ。
「今日、おめでとう…すごくかっこよかった」
隣に腰掛けたジミニヒョンがにこ、と微笑んで、僕は本当に嬉しくなった。
「ありがとうございます…どうしても、勝ちたくて…」
そこまで言ってから僕は、勝ちたかった理由の一つを思い出した。ムホに勝ったら「キスの先のこと」をしていいか聞いたとき、ジミニヒョンは「ムホに勝ったらね」と確かに言ったのだ。思い出すと、頬が熱くなってきた。
「勝ったら…その…ジミニヒョンと…」
上擦った声が出てしまい、僕は唾を飲み込んだ。ジミニヒョンの頬が紅を差したように染まった。
「うん…それで…話そうと思って…」
ジミニヒョンはぎこちなく微笑んだ。
ど、どうしよう…
気持ちが…変わっちゃったとか?
緊張でドキドキしながらジミニヒョンの言葉を待つ。ジミニヒョンは一瞬目を伏せて、また僕を見て、恥ずかしそうに微笑んだ。
「あの…僕、ジョングクと、お泊まり…したいな…」
言い終わるとジミニヒョンは両手で顔を覆って身をよじった。
お泊まり……!!
僕はその言葉の強烈な甘美さに衝撃を受けた。ジミニヒョンの両手を自分の両手でぎゅっと包み込み握る。
「い…いいい行きましょうっ!お泊まりっ…」
僕の勢いにジミニヒョンは目を丸くした後、「ふふふっ」と噴き出した。揺れる髪から覗く耳が真っ赤になっていて、僕はジミニヒョンの手を包む手に力を込めた。
「僕、どこか探します」
僕が力強く言うと、ジミニヒョンはいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「僕、行ってみたいところあるんだ」
「どこですか?どこでも…」
「海雲台(ヘウンデ)ビーチの…ホテルマドリン」
「ほっ⁈まっ⁈」
僕は驚きすぎて変な声を出してしまい、それを見たジミニヒョンがまた体を折って笑った。
ホテルマドリンって…
確か、一泊50万ウォンは下らない五つ星高級ホテル…
ジミニヒョンを見ると、期待のこもった瞳でにこにこ笑ってこちらを見つめていた。
うー、弱った…
夏休み中バイトすれば貯まるかな…