どうしようか心を決めかねているうちに、1分間のインターバルが終わり、最終の3ラウンド目が始まった。何も決められないまま、ムホと対峙する。
わざと負けるか…全力で戦うか…
試合開始の合図とともに、ムホがニヤニヤ笑いながら攻撃を仕掛けてくる。それを見ていると腹が立って、思い切りぶちのめしたくなる。その度に、ジミニヒョンのことを思い出してぐっと我慢した。
どうしよう…
やっぱり負けるしかないのか…
不意に、海辺でジミニヒョンと抱き合った時のことが頭をよぎった。ムホに勝ったらキスの先のことを全部したい、と告げた僕に、ジミニヒョンは恥ずかしそうに「ムホに勝ったらね」と言ってくれたのだ。思い出すと今でも胸が熱くなった。
ごめん、ジミニヒョン…
ジミニヒョンを守るには、これしか手がないみたい…
僕は構えを解いた。先輩たちがどよめく。
「ジョングク!ジミンさんもどっかで見てるのに不甲斐ないぞ」
おそらく何も知らないスンミン先輩の檄が飛ぶ。
そうだジミニヒョン…僕がひどいこと言ったのに今日変わらず来てくれて…
メッセージもくれて…
部室に残っていたお餅の箱とスマホを思い出すと、胸が痛くなった。
僕が…ためらってないで…もう少し早く部室に会いに行けばよかった…
僕は、思い切るためにぎゅっと目を瞑ってから開けた。
「本当に無事で返してくれるんだろうな?」
「当然さ。俺が告白するからな」
僕は、笑みを浮かべるムホを一度睨みつけてから、腕をだらんと下げた。余計な演技などはしたくなかった。
「おい、ジョングク、どうしたんだ?ファイティン!」
先輩たちが送ってくれる声援も今は聞くのが辛い。ムホがにやりと笑って、回し蹴りの構えに入った。
「ジョングクー!ファイティーン!!」
「えっ⁈」
「なに⁈」
いきなり聞こえた声に僕の体はすぐさま反応し、ムホの回し蹴りをすんでのところでかわした。体育館の入り口から、2人の部員に先導されながら、まっすぐ競技場に向かってくる色白の人は…
「ジミニヒョン!!」
「ジョングク!遅くなってごめん!僕来たよ!」
よかったあ…
すぐにスンミン先輩達に部員の輪に迎え入れられるジミニヒョンを見て、安堵のため息が漏れた。ぱっと見たところ、怪我をしている様子もない。
「ちっ」
体勢を崩したムホがいまいましげに舌打ちをした。
「あいつら、何やってんだ…」
「何やってんだ、はお前だろっ」
僕が渾身の力を込めた回し蹴りがムホの頭にヒットして、奴はひっくり返るように倒れ込んだ。