試合の直前まで練習しようと考えていたけれど、ジミニヒョンの姿を見たら落ち着かなくなった。
試合に集中しなきゃ…いけないのに…
ムホ達ヤンウン高校の部員達も体育館のフロアに入ってきはじめていた。
ムホ…
チス先輩と練習をしながらも、昨日ムホが去った後、ジミニヒョンに言ったひどい言葉が頭に何度も浮かぶ。
ダメだ…
やっぱり、試合前に謝らなきゃ…
僕はチス先輩に断って練習を中断した。体育館を見回す。ジミニヒョンの姿は消えていた。
「ジミンさんって、部室?」
「そうだよ」
先ほどジミニヒョンと話していた部員に確認をして、部室に向かう。
許してくれるだろうか…
部室へ向かう廊下を歩く。ただでさえ試合前で緊張しているところに、昨日の怒っていたジミニヒョンを思い出すと、さらにドキドキしてきた。慣れ親しんでいる部室のドアの前に立ち、深呼吸してから、ドアを開ける。
「あれ?」
ジミニヒョンの姿がない。部室には誰もいなかった。お餅の箱とスマホが無造作にベンチに置いてあるだけだ。そのスマホのカバーには見覚えがあった。僕はスマホを拾い上げて確認した。ジミニヒョンのスマホだった。
どこ行ったんだろ…
トイレかな、と思って部室から出ようとした時、自分のロッカーのドアが開いているのに気づいた。閉め忘れたのかと考えて、近づいてドアを閉めるついでに自分のスマホの画面をチラリと見た。
『ごめん、僕寝ちゃってて今見た。大丈夫だよ。僕もごめん。試合前に少しだけ会える?』
ジミニヒョン…
よかったぁ…
ジミニヒョンからのメッセージを確認して思わずため息をつく。昨夜、何度メッセージを送っても既読にならなかったのは、ジミニヒョンが寝てしまっていたからなんだ。僕はホッとして、ロッカーを閉めた。
トイレ…だったら戻ってくるかな?
そう考えてしばらく部室にいたけれど、誰もやってこない。もうそろそろ試合開始の時間だ。
入れ違ったかな…
試合会場は体育館だ。少しここにいて、すぐに体育館に向かったのかもしれない。体育館で会って、試合前に一言でも話そう。僕はそう決めると、ジミニヒョンのスマホを念のため自分のロッカーにしまって部室を後にした。体育館に戻ると、スンミン先輩が安堵したように笑った。
「あ、ジョングク来た来た…どこ行ってたんだ?もう始まるぞ」
ムホを始めヤンウン高校の選手達ももう勢揃いしていた。僕は体育館を見回した。ジミニヒョンの姿はない。僕は慌ててスンミン先輩に尋ねた。
「あれ…ジミニヒョンは?」
「ジミンさん?そういえばさっき来てたのに…いないな」
イヤな予感がする。さんざん練習でウォームアップした体が冷たくなっていくようだ。
「そのうち来るだろ…ほら始まるぞ」
スンミン先輩に促されて、僕は仕方なく競技場へ近づいて行った。