『ジニヒョンが真面目な電話してきたからびっくりしました』
『だ、だって…ジニヒョンが審査するなんて思ってない…』
ジミニヒョンが電話で話す声を聞きながら、僕は内心穏やかではなかった。電話の冒頭、相手がわかった時に、ジミニヒョンが安心したのがわかった。仕事関係だけど、軽口を叩けるくらい親しい相手…どんな人なんだろう。
「あ、えっと…お餅を卸してるんだけど、ホテル側の担当の方だよ。その方が、コンテストに出してみたらって、勧めてくれたんだ」
ジミニヒョンは微笑んだ。
「ずいぶん仲良くなったんですね」
「あ、うん。すごく明るくて面白いヒョンだから…」
心なしかジミニヒョンが慌てているような気がして、僕はカマをかけることにした。
「イケメンなんですか?」
「え、なんでわかるの?」
ジミニヒョンがきょとんとして目を見開く。僕は内心「あちゃー」と叫んだ。
「イケメン、なんだ…」
「うん…背高くて顔ちっさくて…目鼻立ちが整ってて…あ、でもね」
ジミニヒョンは突然くすくす笑い出した。
「肩幅がすごく広いの。おかしいくらい」
「そんなに?」
僕が驚いて言うと、ジミニヒョンは途端に目を細めて僕の首根に腕を巻きつけてきた。
「ね…チャギヤ、もしかして妬いてるの?」
恋人同士でしか使わない呼びかけに胸がどきんと鳴る。
はあ…全くこのヒョンは…
「妬いてないわけないでしょう?」
唇を寄せると、またどちらからともなく唇が重なる。
「ん…」
甘く濡れた熱に酔いしれようとした時、店の奥からおばあさんの声が聞こえた。
「ジミン、大丈夫かい?手伝おうか?」
ジミニヒョンが慌てて唇を離して店の奥に声をかけた。
「おばあちゃん、大丈夫だよ、休んでて」
なんか、デジャブだなあ…
僕は名残惜しくて、ジミニヒョンをもう一度だけぎゅっと抱きしめた。
ふたりっきりになれるところ…探さなくちゃなあ…