「元気だなあ」
「ジミニヒョンとキスしたからですよ」
「もっかいする?」
口を尖らせて拗ねたフリをすると、ジミニヒョンはいたずらっぽく微笑んで、顔を寄せてくる。
「だっ…ダメ、ホントに治まらなくなるから…」
「ふふふっ」
ジミニヒョンは笑いながら、僕の肩に手を置いて、立ち上がった。僕も続いて立ち上がった。
「ジョングクが帰れなくなったら困るからなあ」
まだくすくす笑い続けるジミニヒョンに、一瞬頰を膨らませて見せる。
「今度責任とって下さいね」
「…うん」
僕が言うと、ジミニヒョンは恥ずかしそうに肩をすくめて頷いた。
「結局、飲み物飲まなかったですね」
「…うん、そうだね」
キスに夢中で、ちっとも減らなかった飲み物に手を伸ばすために上半身を折る。その時、ジミニヒョンがくすくす笑いながら、僕の背中に乗るようにして抱きついてきた。
「ちょっ…こらっ」
ジミニヒョンは「ふはっ」と笑いながら、僕の背中に抱きついて頬擦りした。背中にジミニヒョンの体温を感じ、しがみつく腕を腹に感じると、また腹の奥が騒ぎ出す。
「待って…ジミニヒョン、帰れなくなるからダメって…」
「なんでダメ?」
「もう〜知ってるでしょ?」
僕が飲み物を両手に持ち上半身を起こすと、ジミニヒョンは後ろから僕に抱きついたまま、鼻先を僕の首 筋 に埋めた。
「仕返しだよ」
「っこら!パクジミン!」
ちゅ、と首筋に口づけされて、反撃しようにも両手が塞がっている。僕が笑いながら、家庭で母親が子供を叱る時みたいに名前で呼ぶと、ジミニヒョンはくすくす笑って僕の正面にするりと回った。
「僕も跡付けたいな…ダメ?」
「あ、ちょっ…」
僕の両手が飲み物で塞がっているのをいいことに、ジミニヒョンは僕のシャツに手を伸ばして僕がしたみたいにボタンを一つ外した。
「怒られちゃうかな?テコンドー部の先輩に」
怒られはしないだろうけど…
チス先輩に見つかったら僕の身がさらに危なくなりそうだ。僕の心配をよそにジミニヒョンは、あらわになった僕の 肌 に唇を寄せる。
柔らかな髪が首元に触れてくすぐったい。
「ん…あったかい…」
ジミニヒョンが濡れた熱で僕の鎖 骨の下あたりをちぅ、と舐めて小さく呟いた。
「ジミニヒョン…僕、本当に…」
また体中の熱が腹の奥へ集中する気配がした。ジミニヒョンは僕の胸から顔を上げ、僕の困った顔を見て嬉しそうに笑った。
「可愛いな、ジョングク」
「あっ…ジミニヒョン…」
僕の胸元で、くちゅっ、と派手な水音がして、ごく小さな痛みが走る。ジミニヒョンは自分の付けた跡をまじまじと見ると、やがて満足そうに微笑んだ。
「ふふ、じゃ、帰ろう」
「あっ…ちょっ…待って…」
踵を返して、スキップするみたいに軽やかに歩き始めるジミニヒョンに向かって僕は叫んだ。
「また、帰れなくなったじゃないですかー!」
いつのまにか登った月に照らされる砂浜に、ジミニヒョンの楽しそうな笑い声が響いた。