「あの…ここだったら橋見えるから」
後から木陰にたどり着くと、先に着いていたジミニヒョンが、一本の大きな木の下で恥ずかしそうにもじもじしながら立っていた。木の下に立って橋の方を見ると、確かにきれいに全景が見える。歩道から少し離れているせいか、人通りもなかった。
「す、座る?」
キスしたい、と口にして照れているのかジミニヒョンは早口で、すぐにでもキスしたくなったけれどぐっと我慢する。
「うん…でもそのまま座るとやっぱり砂ついちゃいますね」
僕はジミニヒョンの黒いパンツの後ろのポケットを見ながら呟いた。木陰には浜辺でよく見かける蔓のような植物がちらほら生えていたが、その下は砂地になっていた。
「その飲み物の袋を敷いたらどうかな?」
「でも一つしかないです」
「あ…そうだ、大丈夫。ジョングク、これ敷いて座って?」
何かを思いついたのかジミニヒョンが微笑みながら飲み物の入った袋を指さすので、僕は飲み物を砂地に出して、空になった袋を砂地に敷いた。そして湾にかかる橋の方を向き、木を背にして座った。
「ジミニヒョンは?」
僕が顔を上げて聞いた瞬間、橋の灯りが遮られた。ジミニヒョンが僕の投げ出した脚を跨いで、しゃがんだのだ。彼は女の子みたいに折った膝を砂地に付けて、僕の腿の上に座った。
「これならいいかな?」
「ジミニヒョン…」
ドキドキして何も言えないでいると、ジミニヒョンが恥ずかしそうに笑って抱きついてくる。背後の木に体重を預けて、ジミニヒョンの体を受け止めて、ぎゅっと抱きしめる。膝を少し立てるとジミニヒョンがバランスを取ろうとさらにぎゅっと抱きついてくるのがたまらない。胸いっぱいにジミニヒョンの香りと海の香りを吸い込むと、胸が騒いで止まらなくなった。
「結局、橋…見えてないですよね?」
刺激的な体勢が照れくさくて、そう茶化すと、ジミニヒョンは微笑みながら僕をじっと見つめた。
「うん…でも…」
あ…
ジミニヒョンの背中から漏れる橋の灯りがゆらりと揺れる。ジミニヒョンが僕に顔を寄せた。
「キスは、できるよ…」
ジミニヒョンの声は波の音にかき消されるくらいの小さかったけれど、僕には聞こえた。すごく近くで、顔を寄せ合っているからだ。風に揺れるジミニヒョンの髪ごと頬を引き寄せる。どちらからともなく唇が重なった。
「…ん…」
ためらいもなくすぐに触れ合う互いの熱に、腹の奥までずくん、と震える。
「んん…」
波の音と、風の音に混じって、ジミニヒョンのくぐもった吐息とかすかな水音が頭に響く。目を閉じて、ジミニヒョンの柔らかな唇の奥をまさぐると、安堵と共に焦燥感が湧いてくる。
もっと。
もっと欲しい…全部…
「…っふ…」
きつめに吸うと、息が奪われたのかジミニヒョンは苦しげに声をあげた。唇をゆっくりと離すと、ジミニヒョンはとろんとした潤んだ瞳で、非難がましく僕を見つめた。その顔を見るとたまらなくなって、またくちづける。
「ぁ…んんっ…」
ジミニヒョンの小さな手が僕の頬に触れて、もどけしげに耳を軽く握った。
あーもう、そんなことされたら…
理性…どっか行っちゃう…