Side JK
「そんなことする子に見えないけどなあ…見かけによらないんだね」
ムホとの話ーームホとの試合に負けてテコンドーを一度やめたこと、試合に負けた理由が怪我を気にしていたこと、怪我だと思っていたらムホの企みだったこと、それを最近知ったこと、10日後にムホと試合をすることーーなどを話すと、ジミニヒョンはムホの立ち去った方を見やりながら呟いた。
「うん、だから僕も騙されてて…」
思い出すとまた腹が立ってきた。しかし、ちょうど店員さんが僕がオーダーしたバーガーを持ってきてくれて僕は安堵した。ジミニヒョンとデートしているのに、嫌な気持ちを思い出すのはやめにしたかったからだ。
「わあ、これだ〜おっきいね」
ジミニヒョンがハンバーガーの包みを見て嬉しそうに笑う。
「食べましょう」
「うん、ジョングク、並んでくれてありがとな」
「あ…いえ」
にこにこ笑いながらお礼を言われると、さっきまでのいら立ちが霧散していく。ジミニヒョンは大きく口を開けてハンバーガーにかぶりついた。
「あ、うまい」
「うまいですね」
考えてみたらジミニヒョンがお餅以外の物を食べているのを見るのは初めてかもしれない。
…食べてるだけなのに…
…なんでこんな可愛いんだろ…
もぐもぐと口を動かしているジミニヒョンを見つめていると、きょとんと怪訝な顔で見つめ返された。
「あ、こっちの欲しかったりする?」
ジミニヒョンと僕のバーガーは種類が違う。ジミニヒョンは自分のハンバーガーを見てから、僕を見てにこにこ笑った。
「あ…いえ…いや、やっぱり下さい」
僕が言うと、ジミニヒョンは僕に食べかけのハンバーガーを差し出した。そのハンバーガーを持ったままのジミニヒョンの手を包み込みそのまま引き寄せて、ハンバーガーにぱくりと噛みつく。
「こっちもうまいですね」
ふふ、と笑いながら顔を上げると真っ赤に頬を染めたジミニヒョンがいた。
「どうしました?あ、僕食べすぎた?」
「ううん…なんか、僕…不意打ちに弱いのかな…」
ジミニヒョンはぶつぶつ呟きながら首を振った。
「僕にもちょうだい」
今度はジミニヒョンが僕の食べかけのハンバーガーにちらりと視線を投げると、ねだるように首を傾げて僕を見つめた。僕は慌てて包紙を広げて食べやすいようにしてハンバーガーをジミニヒョンの口元に持っていく。ジミニヒョンは自分のハンバーガーを持ったまま、口を開けたから、そこにハンバーガーを差し出した。
ハンバーガー食べてるだけなのに…
ジミニヒョンのぽってりとした唇が開いて、中の赤が見えた。ハンバーガーに噛みつくと、瞳がいたずらっぽくきらめいて、一瞬、僕を見る。一口分のバーガーが赤い口の中に消えていく。ジミニヒョンがバーガーを咀嚼するたび、柔らかな頬が揺れた。
うう、なんか体が…
腹の底がずくん、と震えるのを感じて僕はうろたえた。
キス…したくなってきちゃった…
体が熱い気がして、僕は一緒に頼んだアイスアメリカーノを一口飲んだ。
「ジョングクのもうまいね」
嬉しそうに笑うジミニヒョンに、僕は少し勇気を出して聞いた。
「食べたら、ビーチに行きませんか?」
「あ、行きたい!…行こう行こう」
指先についてしまったソースを舌でペロリと舐め取りながら、ジミニヒョンは笑って頷いた。

