Side JM
「おい、ムホ、何してるんだ」
いら立ちを含んだ声が聞こえて僕は振り向いた。
飲み物を載せたトレイを片手で持ち、ムホを睨んでいるジョングクだった。僕は安堵すると同時に、気まずさを感じた。ジョングクの視線が、ムホが握る僕の手に注がれていたからだ。
ムホに手を握られてるの、見られたくなかったかも…
なんだろ、この気持ち…
「ジョングク…」
ムホが驚いてジョングクを見る。
あれ?……ってことは…
「あれ?知り合い?」
僕が驚いてジョングクを見ると、ジョングクは頷いた。
「ジミニヒョンから手離せよ」
ジョングクは腹立たしげに言いはなち、席に近づいてきた。ムホは鼻先で笑うと、僕の手を離し、自分のトレイを持って立ち上がった。
「ジミンさん、待ってたのこいつだったんですね」
「あ、うん…」
ふたりの醸し出す雰囲気に戸惑いながら僕はムホにうなずいた。
ジョングクがムホを通り過ぎて、ムホからの視線を遮るように僕の前に立つ。そして僕の方を心配そうな顔つきで振り向いた。
「大丈夫ですか?何もされてない?」
真剣な表情に、どきりとして何も言えずにこくこく頷くと、ジョングクは安堵したように頷いてムホに向き直った。
「お前の相手は10日後にしてやるから、さっさとどっか行けよ」
「ふん…」
ムホはまた鼻先で笑うと、僕の方に向いた。
「ジミンさん、じゃあまた」
去り際にムホが僕に向かって手を振った。思わずムホに手を振り返すと、その手をぱっと誰かに掴まれた。僕の前の席に座り、口を尖らせたジョングクだ。
「あんな奴に優しくしないで」
真剣な表情と珍しく拗ねたような口調に、胸がどきん、と跳ね上がる。僕はムホが立ち去ったことを確認して、神妙に聞いた。
「えっと…その…何かあったの?ムホと…」