「今流行ってるやつ、一度食べてみたかったから、嬉しい」
にこにこ微笑むジミニヒョンが可愛くて、人通りがあるのに抱きしめたくなってしまう。
ああ…ジミニヒョンも…さっき僕にキスした時、こんな気持ちだったのかな…
そう考えると嬉しさと気恥ずかしさで頰が熱くなった。黙った僕を不思議に思ったのか、ジミニヒョンは僕の顔を覗き込んでくる。
「どうしたの?ジョングク、今日変だぞ」
「いえ、なんでもないです、入りましょう」
変にさせているのはジミニヒョンなんだからね…
心の中で口を尖らせながら、ジミニヒョンの手を引いて店に入ろうとした。その時自動ドアが開き、大柄の男の人が店内から出てきて僕はあやうくぶつかるところだった。
「あれ?チス?」
ジミニヒョンの声に慌てて男の人の顔を確認する。確かにチス先輩だった。
「あれ、ジミンさん…とジョングク」
チス先輩はジミニヒョンを見て笑顔になったが、隣の僕を見て驚いた顔になった。
うう、なんか胸が痛い…
会釈しながら思わず、ジミニヒョンの手をぎゅっと握ると、チス先輩は僕らの繋いだ手を見て顔を引きつらせた。
「アンニョン、チス!チスも旨辛チキンバーガー食べに来たの?」
ジミニヒョンが邪気なくチス先輩に笑いかける。チス先輩は引きつった顔のまま、うなずいた。
「ジ、ジミンさんも…ジョングクと…ですか?」
「あ、えっと…その…」
ジミニヒョンは一瞬びっくりしたような顔になり、次に恥ずかしそうに口元を隠して笑った。
あ、ジミニヒョン照れてる…
まずい…先手を打たなきゃ…
チス先輩に僕らのこと知られる前に…
僕が当たり障りない答えを返そうとした瞬間、ジミニヒョンはチス先輩ににこっと笑って言った。
「デートなんだ!今日、ジョングクと…」
あちゃー…
ジミニヒョンの口を塞ごうとしたけれど遅かった。チス先輩の驚いた顔がどんどん蒼白になっていく。
ジミニヒョンはやっぱり気付いてなかったんだ…チス先輩のこと…
「さっきね、映画観てきたんだよ…」
そう屈託なく話すジミニヒョンは、何かを思い出したのか、チス先輩が青くなっていくのと対照的に、頬を染めていく。こんな時なのに、すごく可愛くて見惚れそうになった。
「そう…だったんですね…楽しそうで何よりです…それ…では…失礼します…」
チス先輩は力なく呟きながらくるりと踵を返すと、ものすごいスピードで走って遠ざかっていった。
「わあ、チス、早いね…何か急いでたのかな?」
「はは…どうでしょう…」
明日チス先輩と顔合わせられるかな…
そのことを考えると今から緊張する気がして僕は内心ため息をついた。