ジョングクのことが頭から離れない。
正確には、ジョングクが僕を抱きしめた時の感触とか、僕を真剣に見つめていた時の瞳とか、キスした時の…くちびるの、感触とか。お店に立っていても、まるで心ここにあらずだった。幸いなことなのかどうかわからないが、お客さんがいつもより少なく、僕はお店でぼんやりしながら好きなだけ昨日のことを反芻した。
告白、されたんだよな…
まだ信じられなくて、何度も頭の中でジョングクの言葉を思い返す。
『好きです、ジミンさんが』
好き…
そうか…
僕のこの気持ち…
出会った時からジョングクのことが気になっていた。会えない時は早く会いたいと思っていたし、会えた時はすごく嬉しかった。
僕、ジョングクのことが好きなんだ…
これが、好きってこと…
今も、早く会いたくて仕方なかった。お客さんは少なかったけれど、お店のドアがカラン、と音を立てて開くたびに僕はドキドキしてそちらを見た。しかし、いつも練習の前に来ることの多いジョングクが、今日はその時間になってもやってこない。
早く会いたいな…
僕も、気持ちを伝えたい…
僕はそわそわしながらお店に立っていたが、おばあちゃんが退院したばかりなので、今日は早めに店じまいすることに決めていた。
来なかったな…
後で連絡してみようと決め、僕は閉店の看板をだすために店の外に出た。
「ジミンさん!」
聞きたかった声が聞こえて、僕はそちらへ向いた。すごい速さで駆けてくるジョングクが見えて、僕は手を振った。
Side JK
間に合った…
授業の後、練習前にテコンドー部入部希望者の対応をしていたら、ジミンさんのお店に行く時間がなくなった。仕方なく、テコンドー部の練習後に行くことにして、終わった瞬間夢中で駆けてきたのだ。ちょうどジミンさんがお店の外にクローズの看板を持って出てきたところで、僕は安堵した。
「ごめんなさい…遅くなって…」
はぁはぁと息を切らしながら言うと、ジミンさんはにこっと笑った。
「ううん、練習長引いたのか?」
「いえ、入部したい人がたくさん来て…」
ジミンさんが看板をかけて、僕をドアの中へ誘うように背中に手を回した。その手にドキドキしながら、中へ入る。ガラスケースの中にはいくつかお餅がまだ残っていた。
「ふふっ…そりゃそうだよ。テコン舞、かっこよかったもん」
いたずらっぽく笑うジミンさんに、何と切り出すか迷っていると、僕の迷いに気づいたのか、ジミンさんは僕を窺う様な顔になった。
「ジョングク…」
「ジミンさん」
ジミンさんの顔が少し強張ったような気がして、僕は緊張した。
「昨日のこと…僕と、付き合ってくれますか?」
ジミンさんは頰を少し染めて、こくりとうなずいた。それを見た時の僕の嬉しさと言ったらない。
「ホント?ホントに?」
「うん…」
ジミンさんは、またこくりとうなずいた後、「でも、その…」と呟いて目を伏せた。何か否定的なことを言われるのかと思って僕はまた緊張した。