ホテルに戻り、ジョングクの部屋に入るや否や、僕達はきつく互いを抱きしめあった。
「ジョングガ…」
「ジミニヒョン…」
ジョングクの体温と香りを感じると、涙があふれ出して止まらない。ジョングクも涙を浮かべた瞳で僕を見つめると、僕を壁に押し付けて、顔を寄せて来た。どちらからともなく、すぐさま重なる唇に我を忘れそうになる。
ああ…
もう二度とこんな風に…
ジョングクとキスするなんて、出来ないと思ってた…
「っ…」
嗚咽が、重なる唇から漏れる。僕達は泣きながら、角度を変えて何度も口づけを繰り返した。お互いに確かめたくて、必死だった。相手が今、まさに自分の腕の中にいることを。髪、頰、唇、そしておとがい。指先で、手のひらで確かめる。触られただけで、僕の心を熱く震えさせ、溶かしてしまう指先。
そんなのはジョングクだけ…ジョングクだけなんだ…
唇を離して見つめ合う。
「バカ…なんで言わないんだよ…」
脅迫の手紙のことを言わなかった理由は痛いほどわかっていたが、僕はそう言うしかなかった。ジョングクの瞳から溢れる涙を拭ってやった。
「ごめん…怖くて…怖くて、言えなかった…」
ジョングクは僕をぎゅっと抱きしめた。ジョングクの肩に顎を乗せると、その確かさにまた涙が溢れて来た。
あったかいよ…
「もう…別れるなんて…言わないで…」
最後は泣き声になって、うまく言えなかった。ジョングクは僕をきつく抱きしめた。首筋に、ジョングクの涙が落ちるのを感じた。
「僕も…さっき」
ジョングクは大きく息を吸い込んで、眉を寄せた。
「さっき…『関係ない』って言われただけで、すごく辛かった…」
ソジュニヒョンと対峙して、僕だけ狙えと言った時のことだろう。
「お前のこと、守りたかったから…ごめん」
僕はジョングクの頭を抱き寄せて腕の中でぎゅっと抱いて、髪を撫でた。
「うん、わかってる…僕も、同じだったから…」
絞り出すようなジョングクの声に、胸がきりりと痛んだ。
「…ごめんな、ひとりで抱えさせて…ありがとう」
僕達はしばらく抱き合ったままじっとしていた。ジョングクの髪を撫でているとだんだんと落ち着いて来た。腕の中に彼がいることの喜びがじわりじわりと広がっていく。
「ん…」
ジョングクが一瞬身じろぎして、僕はやっと気づいた。
「あ…お前、足…ごめん、座ろう」
「大丈夫だよ」
2人でベ ッドに腰掛ける。僕はジョングクの腿に手を置いた。
「大丈夫?痛むか?」
「大丈夫。ね、もう一回、キス…したい…」
まだ涙に濡れる瞳で請われて、どきりとした。部屋の照明は、ターンダウンにより薄暗く絞られていて、ジョングクの顔に魅力的な陰影を落としていた。そんな彼の唇が近づいてくるのを夢の中にいるみたいな気持ちで待つ。温かい熱。夢みたいだけど、夢じゃないんだ…
「っふ…んん…」
ゆっくりと、取り戻してゆく互いの体温が愛しい。初めは探るようなジョングクの動きがだんだんと、こちらをくすぐるみたいな動きにかわって、胸が騒ぎ出した。
「ジョングガ…」
僕がジョングクの耳のふちを指でなぞるようにしながら名前を呼ぶと、ジョングクは僕を一瞬見た。ジョングクは僕の体に腕を回してきつく抱きしめるとそのまま僕をベ ッドに横たえた。
「っは…ジミニヒョン…夢みたい…僕の…」
ジョングクはうわ言みたいに呟いて、僕の首 筋に鼻先を押し付けてくる。久しぶりの温かい唇の感触に、胸がどきん、と跳ねる。
「あっ…グガ…」
トップスの上から脇腹を 撫でられただけで、びくっと反応してしまって、僕は慌てて両手で口元を覆った。
「ん…ジミニヒョン…」
ちゅ、ちゅ、と首 筋 にキ スを落とし続けながらジョングクがトップスの下に手を忍び込ませてきた。
「んんっ…ぅあ…」
初めての時みたいに、触れられるところが全部熱と痺れを持つ。
「はぁ…ジミニヒョン…」
ジョングクは顔をあげて、再び僕に顔を寄せてきた。
「僕のものだって、確かめさせて…」
ジョングクの言葉の最後は僕の唇の中に消えた。
