「動くな」
ソジュニヒョンはテヒョンに銃口を突きつけ直し、ユンギは顔をしかめた。
「…体格的に…テヒョンより俺の方が御(ぎょ)しやすいだろ?」
「ふん」
ソジュニヒョンは鼻先で笑った。優しく頼り甲斐のあったさっきまでの姿はどこにもない。俺は背中に汗が流れていくのを感じた。
「まあ、確かにお前の言う通りにした方がよさそうだ」
ソジュニヒョンは冷たい表情のままそう言うと、ユンギに「こっちに来い」と言い放つ。ユンギが近づくと、テヒョンを離すと同時にユンギの体を後ろから片腕で羽交い締めにしてこめかみに銃口を押し当てた。
「ユンギヒョン…」
テヒョンが泣きそうな声で呟くと、ユンギはソジュニヒョンの腕に捕らえられたまま一瞬だけ片方の口角を上げた。
「テヒョン、しっかりしろ。まだ希望はある」
「お喋りはそこまでにしろ。早く互いに縛るんだ」
ソジュニヒョンの有無を言わさぬ声に促され、俺とテヒョンは互いの足首を縛った。その後は指示通り、2人の体が離れないよう足首を縛ったロープをさらに縛りあう。俺とテヒョンは向かい合って座り、足首を固定された姿勢になった。
「口にこれを貼れ」
ガムテープを渡され、仕方なく言う通りにする。
「次は手首だ。テヒョン、ジンの手首を縛れ」
テヒョンが、こっそり緩められるようにしようと思ったのか、俺に目配せを送った瞬間、「緩まないようしっかり縛って、足首のロープに固定しろ。後で確認する」と冷たい声が飛んできた。テヒョンが言う通りにすると、ソジュニヒョンは「ユンギ、テヒョンの手首をジンと同じように縛れ」と命令し、ユンギを捉えている腕を離した。
ユンギは向かい合って縛られている俺たちのそばにしゃがみこみ、俺の手に触れた後、テヒョンの手をぎゅっと握った。
「んん」
ガムテープで口を塞がれたテヒョンがうめいて、眉を寄せてユンギを見つめる。ユンギはテヒョンと目を合わせて一瞬だけ頷いたように見えた。テヒョンの両手首を縛って足首のロープに固定すると、ソジュニヒョンが再びユンギの腕を捕らえた。そして、俺たちのロープを抜け目なく確認すると、最後に俺たちのポケットからスマホを取り出して、自分のポケットに入れた。
「お前達はここで静かにしてろ。ユンギは俺と一緒に来い…ユンギ、わかってると思うが騒いだら命はない」
ソジュニヒョンはユンギの腕を捕らえたまま、銃を持った手をジャケットの下に隠し、部屋を出て行った。テヒョンと顔を見合わせて、少し体を揺すってみる。固く縛られたロープはびくともせず、俺は落胆した。
どこに…希望なんかあるんだよ…ユンギ…!
