Side JK
ああ…
どうしよう…
僕はオリエントホテルに向かう道中、マネージャーが手配してくれたタクシーに乗って苦悩していた。
僕のこの行動が、またジミニヒョンを危険にさらしてしまうかもしれない。
けれど、ナムジュニヒョンのメッセージを見た途端、僕の頭はオリエントホテルに行くことしか考えられなくなった。行って何がしたいのか、どうすればいいのか、よくわからなかった。何度もジミニヒョンとメッセージをやりとりしたスレッド画面を開いて、開いては閉じた。何を言えばいいんだろう。ただ、このまま何もせずに、2人が今夜同じ部屋に泊まるのは堪えられなかった。ジミニヒョンの可憐な声、笑うと糸目になるアーモンドみたいな形の美しい瞳、柔らかくて、キスしたらこちらを夢心地にするぽってりした可愛い唇、雪のように真白な肌、その全てが他の人のものになることを考えると、胸が張り裂けそうだ。しかもそれが、よく見知ったメンバーだなんて…誰よりも尊敬できる、僕らのリーダーだなんて。なんてことなんだろう。
タクシーのメーターが上がっていくのを見ながら、僕は今夜、どうにかしてジミニヒョンに会って、自分の気持ちを伝えようと決めた。屁理屈かも知れないけど、あの忌まわしい手紙には、好きでいることをやめろとは書いていなかった。誰だか知らないけど、僕のこの気持ちまでコントロールできると思ったら大間違いだ。
僕は、ジミニヒョンが好きだ。
離れていても、嫌われても、あなたを失っても。ずっと。
なんとかして、この気持ちを伝えよう…
僕はスマホをぎゅっと握りしめた。
はやる心とは裏腹に、タクシーは渋滞に巻き込まれてなかなか動かなかった。夜の街は帰途を急ぐ車であふれていたからだ。車から街並みをぼんやり眺めていた僕は、急にタクシーが一軒のスーパーマーケットと思しき店の前に止まって面食らった。
「It’s Aldi’s Store. I’m waiting for you here. Please go shopping!」
年配のタクシー運転手は品の良い落ち着いた話し方でスーパーの方を指した。
なんでだろ…
僕、スーパーに用事ないけど…
「あ…I want to go … Orient Hotel 」
首を振りながらそう言うと、運転手の男性はびっくりしたようだった。
「No shopping?」
「No shopping! Orient Hotel!」
焦り気味に僕が言うと、運転手はにこりと笑った。
「OK,OK. I’ve asked to take you here before going to Orient Hotel by your hotel staff.」
運転手は鷹揚に言うと、すぐに車を出してくれた。
オリエントホテルに行く前にここに…
ホテルの人、別の人と間違えたのかな…
早く着きたいのに…
僕は焦る気持ちをいなそうと、バックシートにもたれて深く息を吐いた。
