探究を支えるのは、確かな理解である
― You and I が提案する英語授業の本質 ―
1.はじめに ― 現場の先生方が抱える“見えない疲労”
You and I をご利用いただいている全国の先生方へ。 日々の授業づくり、本当にお疲れ様です。
近年、教育現場では「主体的・対話的で深い学び」が重視され、 その実現方法として課題解決型学習やタスクベースの活動が広く取り入れられるようになりました。
これらの考え方には大きな価値があります。 生徒が自ら考え、仲間と協働しながら学ぶことは、これからの時代に欠かせない力です。
しかし、実際に授業を組み立てていると、こんな“もやもや”を感じることはないでしょうか。
【Today's Goal(学習課題)】 「新しく来たALTの〇〇先生にインタビューをして、お互いの共通点を見つけよう!」
【Today's Point】 「Are you ~ ? を使って、好きなものや出身、気分などを聞いてみよう」
指導案としては、一見すると「主体的・対話的で深い学び」を実現した授業のように見えます。 しかし、先生方の心の中には、こんな現実もあるのではないでしょうか。
- 毎回ALTが来るわけではない
- 結局、生徒同士で質問し合うことになる
- 生徒の中に「これ、日本語で聞いた方が早いのでは?」という感覚が生まれてしまう
もちろん、この活動自体が悪いわけではありません。 しかし、英語を使う必然性が十分に感じられないまま、活動だけが先行してしまうことがある。
そして先生方は、
- 毎時間の Today's Goal
- 毎時間の活動設定
- 毎時間の課題づくり
に多くのエネルギーを注ぐことになります。
単元全体のゴールを設計することには大きな意味があります。 しかし、1時間ごとに「それらしい課題」を作り続けることは、現実には大きな負担です。
これは先生方の指導力不足ではありません。 教育改革の流れの中で、「学びの本質」よりも「授業の形」に意識が向きやすくなった結果として生まれた課題です。
2.課題解決型学習は「目的」ではなく「方法」のひとつ
まず確認したいことがあります。
- アクティブ・ラーニングは、目指すべき学びの“状態”
- 課題解決型学習は、その状態に近づくための“方法のひとつ”
つまり、 すべての授業を課題解決型学習の形に当てはめる必要はありません。
優れた方法ではありますが、唯一の正解ではありません。 毎時間「それらしい課題」を設定しようとする発想が、 現場の疲弊や学習活動の形骸化につながることもあります。
大切なのは、活動の形ではなく、生徒の学びの質です。
3.探究の前に「理解」がある
You and I が大切にしている考え方があります。
探究を支えるのは、確かな理解である。
どんな探究も、どんな対話も、その土台には理解があります。
英語は知識教科というよりも、 理解を伴った技能教科です。
スポーツや楽器の演奏と同じように、
- 理解する
- 繰り返す
- 自動化する
- 使ってみる
という過程を経て、初めて身についていきます。
理解があるから使える。 使えるから考えられる。 考えられるから探究できる。
探究は山頂です。 語彙・文法・基本表現・運用力は、その山を登るための装備です。
装備がないまま山頂を目指すことは、生徒にとっても先生にとっても苦しいものになります。
4.You and I の教材が目指していること
You and I の教材は、 「活動によって生徒を動かす教材」ではありません。
目指しているのは、 「理解によって生徒の脳を動かす教材」です。
● 例:疑問文の理解
一般的には、 「be動詞を前に出します」 というルールとして説明されることが多いでしょう。
しかし、それだけでは多くの生徒にとって丸暗記になってしまいます。
You and I では、 「人は驚いたり、確認したくなったりすると、言葉が順番どおりに出てこなくなる」 という感覚から考えます。
すると、 「だから Are が先に飛び出すのか」 という理解が生まれます。
この瞬間、生徒の脳内では、
- なぜだろう
- なるほど
- そういうことか
という知的な対話が始まります。
そこには、
- 驚き
- 発見
- 自己内対話
- 構造理解
があります。
私は、この瞬間こそが本当の意味での主体的な学びだと考えています。
無理な会話タスクがなくても、 ALTとの活動がなくても、 教材そのものが生徒の思考を動かし、学びを駆動することができる。
それが You and I の教材が目指している姿です。
5.なぜ「活動」だけでは十分ではないのか
研修や研究授業では、次のような誤解が生まれがちです。
● 誤解①
「課題解決型学習をやれば主体的になる」 → 主体性は活動の形からは生まれない。 → 理解し、納得し、自分の中で意味づけができたときに生まれる。
● 誤解②
「活動量が多いほど学習量も多い」 → 盛り上がっても理解が伴わなければ学びは深まらない。
● 誤解③
「英語は使わせれば伸びる」 → 基礎が不十分な状態で使わせても負荷が高すぎる。 → 英語は技能教科であり、理解→反復→自動化のプロセスが不可欠。
6.英語2点の劣等生だった私だからこそ
私は高校時代、英語で2点を取るほど英語が苦手でした。
- なぜそうなるのか分からない
- なぜその語順になるのか分からない
- 覚えなさいと言われても覚えられない
そんな経験をしてきました。
だからこそ、
- 英語が苦手な子がどこでつまずくのか
- なぜ説明が伝わらないのか
- どこで理解が止まるのか
が分かります。
You and I の教材は、その経験から生まれました。
7.授業の本質に戻る
授業にはさまざまな形があります。
- 探究も大切
- 対話も大切
- 協働も大切
しかし、そのすべてを支えているのは「理解」です。探究を否定したいのではありません。
むしろ、生徒たちが本当に探究できるようになるために、まず確かな理解と技能を育てたいと考えています。理解と探究は対立するものではありません。
理解があるから探究できる。それが、You and I が大切にしている考え方です。
You and I の教材は、課題解決型学習の形に合わせるための教材ではありません。
生徒の脳が 「なるほど!」 「そういうことか!」 と動き出す授業をつくるための教材です。
外側から無理に活動を与えなくても、 理解そのものが学びを動かす。
形に振り回される必要はありません。 授業はもっと自由でいい。 もっと本質に向かっていい。
明日の授業が、生徒たちの「わかった!」で満ちる時間になることを願っています。