続・『岸田森』をめぐる断章 | 星が語る『Star』~Astrology Cafe~

続・『岸田森』をめぐる断章

不死蝶 岸田森


『不死蝶 岸田森』には、友人である詩人、長田弘の、次の詩が掲載されています。



『友人の死』


これをしたといえるものはない。

こんなふうに生きちゃいけなかった。


きみはそういって、静かに笑った。

怒りを表にあらわすことをしなかった。


静かな微笑は、けれども、

きみの怒りの表現だったとおもう。


きみが叫ぶのを聞いたことがない。

慎ましさが、きみの悪徳だった。


癒すすべのない病に襲われても

慎ましさを、頑としてまもった。


蝶を愛し、ジャズを愛し、

話すときは、まっすぐ目をみて話した。


何一つ、後に残すことをしなかった、

心の酸のような、微笑のほかは。


「人間は、一つの死体をかついでいる

小さな魂にすぎない」


さよなら、きみのことを

ほんとうは何も知らなかった。